スイスで話されているドイツ語(1)それは津軽弁

スイスの住民の約6割が日常で話しているドイツ語Schweizerdeutsch(スイスドイツ語)、それは津軽弁。あるいは真正の鹿児島弁、または茨城の言葉。津軽弁が日本語であることは間違いないが、津軽地方以外の人には理解が困難。津軽弁と異なるのは、日本語の方言はどんどん少数派になる傾向にあるそうだけど(沖縄のウチナーグチもちゃんと喋れるのは3割!という数字もあることを知って少なさにびっくり)、ドイツ語のスイス方言は健在、少なくともあと100年は大丈夫そうなこと。スイス弁ドイツ語より氷河のほうが先に無くなりそう。

スイスでも公式の場で話されるのはHochdeutsch=標準ドイツ語とも呼ばれる、後述するドイツ人でも分かるドイツ語である。しかしスイス弁ドイツ語、幼児もお年寄りもその中間も皆しゃべっている。大学教授も小学生も私的な仲間内の場ではスイス弁ドイツ語。以前出会ったドイツ人に「スイスで話されているドイツ語が自分が母国語として知っているドイツ語とは違って、聞き取れるようになるまで3年、自分で話せるようになるまでさらに2年かかった」と泣かれた。そう、スイスにやってくる外国人も、スイスで「生きて」いこうと思ったらスイス弁ドイツ語を「聞いて・話せる」ようにならないと周囲とのコミュニケーションが難しくなる。まあ、英語だけでも生活できるけど、外国から来た親が子供が友達と話している内容がわからない、などの面倒が出てきます。

そして、スイスのフランス語圏(スイスの約3割)で育った人にとっては、一生懸命学校で習ったドイツ語Hochdeutsch(フランス語圏ではスイス弁ドイツ語suisse allemand(フランス語)に対してBon allemand=良いドイツ語と呼ぶ)だけでは全く太刀打ちできない(違うのは話し言葉であって読み書きのドイツ語には問題がないので学習努力は無駄にはなりません)。しかし相手(スイス弁ドイツ語話者)は6割と多数派―――日本語に加えて津軽弁を習得しなければならないのかーーーという苛立ち、怨念の元になっているのです。(私は津軽弁に対する悪い感情は全くありませんよ。あくまで例えです)

スイスには言語境界線というものが存在しますが、言語間の人の交流は盛んです。ワロン語とフラマン語に真っ二つに分かれて対立も激しいらしいベルギーとはだいぶ異なります。スイスの場合、ドイツ語とフランス語に加えて、一割程度のイタリア語圏、超少数派のロマンシュ語を話す人の存在が、真っ二つに分かれることを防いでいるようにも思えます。ちなみにイタリア語圏の人たちはほぼ全員スイス弁ドイツ語を解します。ドイツ語圏から大勢やってくるのと、スイス弁ドイツ語が話せないと将来的に厳しいので。

スイス弁ドイツ語へのフランス語圏のスイスに住む人の苛立ちは否めないが、逆方向・ドイツ語圏側からのフランス語圏への想いは屈託がないように見えます。昔書いた記事にある、「言語を学ぶためにお小遣いを稼ぎながら異なる言語環境でホームステイをする制度」を利用して、フランス語を学ぼうとドイツ語圏からやってくる若者は今でも多いです。それに比べてフランス語圏からドイツ語圏へは、「変な方言なんて学べっかよ!」といった気持ちゆえか、ずっと少ないのが残念。

まあ九州の大きさ程度の小さい国だし公共交通機関は網の目のようだし、愛は盲目だし、異言語間の交流や恋愛や結婚は普通なので苗字がドイツ語風かフランス語風かでどの言語を話すかを判断して反対側の悪口をいう(互いの言語圏を揶揄するたとえには事欠かない)のは危険です。家族や兄弟が異なる言語圏に散らばってるのも普通ですし、多くの言語を巧みに操る人も実に多いのがスイスの驚異的なところでしょう。

コメント

  1. 合言葉は同じ誕生日♫ より:

    昔から多言語対応できてしまうスイス人はすごいなーと思ってました。幼少の頃からそんな環境にいるとみんな自然と(ある程度の学習は必要でしょうけど)普通に何ヵ国語も話させるようになるものなのでしょうか???

    • panorama-alpin より:

      いやいやこればっかりは本人の努力と環境と必要かどうかによりますよ。政治家とか全国に拠点がある会社のトップは多言語、少なくとも独仏を操れたほうが断然有利だし、若いころからあちこち試合などで飛び回ってるスポーツ選手も複数言語に長けた人多いですね。その気になれば、違う言語圏にサクッと行って帰ってこれるので、修練の機会は簡単に作れるはずですが、他にやりたいことあるよね~
      あと、話せる、きちんと話せる、聞きとれる、意思を伝える程度の文章が書ける、正しい文法で書ける、新聞記事が読める、看板に書いてあることが理解できる、等々様々なレベルの言語能力があるかなあ・・・

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