スイスにおける若者の就職事情(6)言葉を学ぶ Séjour linguistique

義務教育が終わってからの選択肢、Séjour Linguistique/Sprachaustausch―語学研修についてお話しします。知り合いの娘さんは中学校を卒業したら8か月間オーストラリアに英語を学びに行くそうです。看護系学校への入学試験にパスしたけど、学校は来年からにしてその前に英語。そう今は英語なんですね。

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スイスには4つの公用語がありますが、4か国語が等しくどこでも使われているわけではなく、大抵の場所ではそのうちの一つの言語だけが使われています。異なる言語圏のスイス人同士が意思疎通できるのは、学校で受けた外国語教育のおかげですが、学校で習っただけでは普段使っていない言葉がなかなか上手くならないのはスイスでさえ同じです。同じヨーロッパ言語でもそうなのだから、あぁ日本人が英語に苦労するのは当然か・・・

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「外国語」、これはまたスイスでの職業人生において重要なアイテムです。上達には現地で暮らすのが一番、でもお金が無い若者への便宜がSéjour Linguistiqueの趣旨です。ひと昔前までは看護師学校に入学するにはその前に一年間のSéjour Linguistique(自分が育ったのとは違う語圏で過ごして学ぶ)が義務だったそうです。違う言語圏でたまたま怪我して病院で言葉が通じなかったら困るわ!

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Séjour Linguistiqueには色々なタイプがあります。知人のドイツ語圏スイス人(89歳)は義務教育終了後、第二次世界大戦中から1945年の終戦を挟んだ1年間をスイスのフランス語圏の富農宅に住み込んで、家事から農作業までの手伝いをして過ごしました。いきなり親元を離れて寂しくなかったかと聞いたら、女主人に良くしてもらったのと新しい環境が珍しくて楽しくて仕方なかったそうです。別のドイツ語圏スイス人は1980年初めに中学卒業後、フランス語圏スイスで部屋を借りてもらって老人ホームでの手伝いで給料をもらいながら、フランス語に磨きをかけたそうです。

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さらに、au-pair(オーペー)という、一般家庭に滞在しながら語学学校に通う制度があります。住み込む家で家事や子守をし、場合によっては「お小遣い」程度のお金を得ます。ホームステイでは受け入れ先の家庭に費用を払わなければならないのに対し、au-pairでは宿泊費と食費が浮く代わりに週30~40時間を超えない「お手伝い」が求められます。そのため、既に現地の言語で意思疎通ができることが条件で、また期間も6か月以上と長めです。家事や子守が期待されている以上、15~20歳の女子が主体です(少なくとも昔は女子限定だった)。

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スイス人の母語以外の言語能力には個人差があります。学歴よりも本人の育った環境と努力次第ですが、Séjour Linguistiqueは若い時期にどっぷりと「外国語」に浸って学べるので効果が高いでしょう。

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前々回のStageもそうでしたが、先のことはわからなくて、やりたいことが見つからなかったら、とりあえずできることをやっておこう、住居や生活費の心配がいらなくてお給料も少しもらえるかもしれなくて経歴にプラスになる。環境を変えることで見えてくることもあるでしょう。慣れない言葉の中に身を置くって何歳になっても新鮮ですし。

外国語研修について

https://www.movetia.ch/en/programmes/noc/1/

Apprentissageの前の準備の年としての語学研修。年齢に合わせた仕事を週に3日半、語学学校に1日半通います

https://www.orientation.ch/dyn/show/7370?lang=fr&id=36589

写真は2018年9月14日 BernEXPOでのSwissSkills

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