スイスの住居(9)断熱の良い家

スイスというと寒そうなイメージがあるかもしれませんが、一歩建物内に入ってしまえば真冬でも暖かく、時には暑すぎるくらいです。集合住宅では室内を18℃だか20℃だかの気温を保つよう建物主に課せられているそうです。といっても建物によっては古くて隙間風が吹いたり暖房の効きが悪いことももちろんあります。住んでみて意外だったのが、全館暖房の割には電気料金が安いことです。(注)今までスイスで住んだ住宅5軒は全て電気による集中暖房(セントラルヒーティング)でした。

建設途中の一般住宅。壁の厚み

理由の一つには、建物の断熱効率の良さです。今年の10月初めの地域広報誌「Lausanne Cité」によると、Lausanne市内の公立学校50余校、110棟の校舎は今後10年かけて、順次改修されます。目的は二酸化炭素の排出量削減。2030年までに達成すべき目標値のためには夏休みに工事をするとして今から始めなければならないそうで、10年間の予算が400億円。

建設中の住宅。断熱材の類と思われる

今年の3月から5月にかけて、本ブログでスイスでの学業と職業訓練について書き、後半はスイスの学校施設の写真を載せました。多くの学校の建物が100年以上前か、原油が安くて地球の温暖化について考えていなかった人口急増時の1970年代に急いで建てられたものでした。建物は既存のものを残しますが窓を取り換えと外壁の断熱の強化、屋根への太陽光発電パネルの取り付けと暖房設備の改善にて暖房による二酸化炭素の排出量を65~70%削減できると見込んでいます。

建物の緑

2重窓は本当に効きます。うちは古い窓の木枠のペンキがボロボロ落ちてきたのが理由で何年か前にgérant(大家との取次ぎをしている管理会社)に頼んで替えてもらったら暖房効率と防音が劇的に改善しました。

ここ、下は屋内駐車場です。街全体が斜面上にあり、車の入り口はこの下。手入れした植生ではなく、コンクリート面のわずかな土壌にたくましく生えてます。

なお、前々回に書いたように、新しい建物を建てるときは予定地にEnquête publique、建物の概要を告知する必要があります。建物の暖房方法も書くのですが、これから建てるんだったらMinergieという使用エネルギーが極限まで少なくなるように建物自体を設計する方式やヒートポンプ方式(温水が循環する、のかな)、そうじゃないと建築許可が下りないんじゃないかな。脱・化石燃料による暖房、その一方で集合住宅でも暖炉を配置するのも流行ってますが、薪ストーブは色々地球にやさしいらしい。

駐車場が下にあるとは思えない、珍しいほったらかしの緑地。こんなところがあるとは知らなんだ

この地球温暖化を何とかしなきゃ、の動きは物凄いです。10月20日にはスイスの総選挙があり、「緑」系統がどこまで票を伸ばすか、有権者の関心は各党の「地球温暖化」への対応とされてます。右派だけは「地球温暖化の議論はヒステリー」とのスタンスですが、実際、去年あたりからの、特に若者の地球温暖化への抗議デモは未だかつてない規模です。多分日本では信じられない熱量です。「自家用車を使わないようにしたり、肉の消費量を減らしたり、節電に努めたり、色々努力したって個人でできることには限りがある。政府が、それも一国じゃなくて多くの国が抜本的な対策をとってくれなきゃ地球の未来は無い!勉強したり職業訓練しても私たち若者の未来が無いなんて、やってられないじゃない!」という危機感。

下に降りて駐車場の建物の入り口の天井。今回の企画用のオブジェだと思いますが、上に生えてる木の根が天井を突き破って伸びてきたという設定。いやこれフェイクでしょ。

今なら何とかなるかもしれない、今すぐ取り組まなければならない。ちなみに断熱の良い家は暑さに対しても強いです。建物もそうですが、街中に緑を確保するって大事なことです。木があると落ち葉処理が大変ですが、葉から蒸散、気化熱で周囲の温度を下げます。

何でここってアスファルトがボコボコになってるのか、と不思議に思ってたんですが、そばにある木の根のせいだったんですね。街のど真ん中人通りMaxな場所です。

先週まで解されていたLausanne Jardins 2019ではLausanne市内の、「こんなところに緑地!再発見」の機会でした。街中に植えられた街路樹、木の根はこの辺りまで広がってますよ、という説明もあり、思いがけず遠くまで伸びているのでびっくり。上の写真では、木の根の作用でアスファルトが割れてボコボコになったところ。何で?なんで直さないの?と通る誰もが思わずにはいられない人通りの多い場所なんです。世話は大変だけど、それでもホント、緑地は大事。目先の経済よりも大事だと思うんだけど。

集めに来る共同ゴミコンテナーの例。左より一般ごみ、堆肥にする用の生ごみ、リサイクルにされるガラス瓶、紙ごみ。落ち葉を含む生ごみを気軽に捨てられるコンテナが有るとないとでは大違い

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