Losanne, Svizzera (3) 現在のイタリアからの移民は知的労働者も多い

その昔、イタリアでの移民は手っ取り早い失業対策として、国外移住者がイタリアへの送金(1948年には8500万ドルの送金)をし、不景気から起こる社会の緊張緩和(共産主義の元)のために国家政策で、村々に移民推進事務所があって斡旋してました。

イタリアからスイスに入る移民の少なからぬ割合は、Simplon(シンプロン、これ自体イタリア人が掘ったのだが)トンネルを通って鉄道で来ました。トンネルを抜けた先に最初にあるスイスの駅がBrig。列車での長旅を終えるとBrig駅につくられた検疫所で並ばされて医療検査を受ける必要があり、これが屈辱的でつらかった、と語る年配者の証言もありました。

イタリアの移民促進政策が国内の共産主義化を抑制する政策である一方、移った先のスイスでの劣悪な労働条件に対して連帯して労働組合などを作られてはたまらない、というのがスイス側。何しろスイスでは100年以上前にゼネストがあって以来ストなし(デモはある)、共産党無し。イタリア人の労働組合結成等への監視は厳しかったそうです。

そんな時代から現在も、沢山沢山のイタリア人がスイスに働きに来るけれと、今来るのは超優秀な知的労働者であることも多いです。しかも他の外国人と比べてずば抜けて天才タイプが多い印象。ある多国籍企業は世界中に支社があり、エンジニアたちが国を超えて連携して働いています。しかもロンドン支社で働くトルコ人とスイス支社のチュニジア人という風にクロスオーバーしていて何が何だか。そして協力して仕事しているけど給料は雇われた事務所がある国ベース。となると、事務所の家賃も社員の給料も馬鹿高いスイスに事務所構えておく必要ないんじゃない?と尋ねたところ、スイスでの高給に惹かれて応募してくる超優秀なイタリア人をはじめとする数人の働きが不可欠なので、スイスに事務所をキープしておく価値はある、だそうです。

かつては「スイス人」の雇用を奪うとか「スイス」らしさが失われる、と危惧された国外からの労働力、イタリアの後に続いたスペイン人にしてもポルトガル人にしても、スイスを目指す世界各地からの労働力にしても、むしろ優秀な彼らのおかげで普通のスイス人の雇用が守られている面があると思います。

職がないから悪条件でも働く人達ではなく、すでに出身国でバンバン稼いでた人が更なるお金を求めてやってくる。うちの近所の○○人の弁護士は、スイス内の○○人相手の法律や保険相談の事務所を開いて大変に金回りがよろしいようです。

で、素朴な疑問:あんなに高度な技術や知識の宝庫の国イタリアから何故にいつまでも、たぶんこれから先も労働力や頭脳流出が続いてしまうのか?スイスなんて資源も無い山の中の民(偏見)だったんでしょ?30年位前、スイス在住のイタリア人は「スイスにあってイタリアにないもの:公共のものを大事にする気持ち」と言ってたそうです。30年経って今のスイスでは無くなりつつあるけれど、スイスの知人によると10年前の沖縄の、「ゆいレールの駅の周辺で地元民が自主的に花壇の手入れをしている光景」に見たそうです。今もあるかな?

年明けからは、スイスでのイタリアなどからの移民について触れてる映画2本について書きます。今年一年読んでくださりありがとうございました。よいお年をお迎えください!

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