2021年です。年中うし年のスイスから、こんにちは。今年もよろしくお願いします。
それなりの都市部でも、ちょっと郊外に行くとすぐに牛が牛舎から外に出て草を食んでいるのに出会います。
スイスの牛事情として、所により昔からの固有種が育てられていること。もちろん乳をよく出す改良種が多いのでしょうが、特に山間部に行くと、その土地に合った在来種に出会えます。
毛の長いタイプの牛。
Valais州の特に西側のフランス語圏ではHérensという黒牛の固有種がCombat de reines:闘牛用に育てられていて、角を残したままのことも多いです。
Hérensは山地に適した種で小柄な乳牛。牛は時に私の行く道に立ちふさがっています。
これはSwiss Fleckvieh種かしら。茶色がブチのようにある牛。Red Holsteinとスイス原種のSimmentalの間にできた種。ちなみにSimmentalは茶色がもっと全体に広がってます。交配ゆえに、ホルスタインの中には茶色のブチがあるのもあるからホルスタインかも。また右側のは全体的に茶色だけど顔は白いSimmentalというスイス固有種にも見えるな。
苦労して登った山の先で待っている牛たちとの邂逅。牛のほうが先にいるからね。道の真ん中を牛たちが占拠している時は牛を刺激しないよう、できるなら静かに遠回りして(道を見失わないように)進みましょう。
春から夏の間、麓の牛舎を離れ高地を転々と毎日場所を変えて草を食べ、その場で乳を搾って、場合によってはその場でチーズにして。
夏を山で過ごした牛たちは、秋には牛飼いと一緒に着飾って山を下ります。これらはMontbeliard種かも。スイス国境からわずか10㎞のフランス原産の牛で、スイスではフランス語圏で主にみられます。
各地にその土地の牛がいて、その土地のチーズがあります。牛・ヤギ・羊などの飼育は農耕に適さなかった土地で暮らしていくため、収入を得るための手段でした。Sbrinzをはじめとするスイスで作られたチーズがイタリアやフランスへロバの背で運ばれ「道」が整備されていったことは以前書きました。
スイスには12の「AOP」チーズという「その土地で作られた」認定チーズがあります。特徴は搾ってすぐの未加工の生乳を原料としていること。
殺菌していないので原乳で活発に生きていた細菌がチーズに独特の香り、風味を与えます。牛が育って草を食んだその場所の味となります。腕のいい牛飼いはよい草が生える場所と時期を熟知して牛を適切な場所に連れていくそうです。
この牛はスイス原種のBrune。牛が食べるのは草と干し草のみ。サイロで貯蔵された干し草は使わず。スイスで生産されるチーズの31%がこうした「生」乳を原料としています(2017年の統計)。一方そうした生乳チーズはEU全体(大雑把だな)では全チーズ生産量の3%、それ以外の全世界では0.5%のみです。
ちなみにスイスでは原乳の43%がチーズになります。素敵な牛のお尻を見ながら今日はこれでおしまい。今年は思いっきり牛とチーズとワインについて語って歩く予定です。
写真は2011~2018年にかけてのスイス各地の牛たちのごく一部。
Swissmilk:スイスでの乳牛種トップ7
https://www.swissmilk.ch/fr/le-lait-suisse/nos-vaches/notre-top-7-des-races-de-vaches/
こちらはスイスの肉牛(一部)
https://viandesuisse.ch/stories/lelevage-bovin-en-suisse