Alpage、Alp  山での牛の飼育

歩く途中、実にいろいろな所で牛と出くわしますが、なぜそこに牛がいるのか?なんでこんな所で高地トレーニング?

牛、羊、ヤギの群れを夏の間の数か月間、山に連れて行って新鮮な草を思う存分食べさせる、これをalpage アルパージュ (仏)、 Alp(e) アルプ (スイスドイツ語)、 Alm アルム (普通ドイツ語) といいます。

「ハイジ」の中で、ペーターは毎日ヤギの群れを往復させていましたが、もっと高低差がある場合などには、動物達は期間中ずっと高地に滞在し続けます。乳牛の場合は日に二度乳を搾らなければならないなど、動物が居る以上その面倒をみる人間が必要になり、そのための人員の往復や得られた生乳を麓におろすために、前々回お話しした共同運営のロープウェーが活躍します。

生乳は、麓に運ばれて加工されるか、山腹のチーズ小屋で「地産・地加工」されます。その場合、牛だけでなく人間も電波の入りにくいような場所で数か月ずっと働きます。ここで作られたチーズはFromage d’alpage、Alp Käse (山のチーズ)と特記されます。

牛に比べて弱い羊やヤギの山地での放牧は、オオカミなどから守らなければならないので羊飼いや犬が付き添う必要があります。

牛にしても羊やヤギにしても、山地での飼育は相当にキツイ仕事です。動物への愛情(食べるけど)と伝統への深い思いから成り立っている仕事、と良く言われますが、この山地での放牧は環境や生態系の面において大きな意味があります。

夏の間、動物たちが放される場所は周期的に計画的に替えられます(長年の経験で)。動物が草を食べることで、その一帯に特定の草だけが生い茂ることなく順次別の植物が芽生えて成長でき、生物の多様性が保たれるのだそうです。

何より、牛乳が、チーズが、牛の食べる香りのよい草によりとても良い味になります。チーズだけでなく、肉として売られる場合も、Alpage物として、放牧地や放牧期間などを明記して高価格で売られるのだそうです。

Alpageが行われる地域では、麓から隊列を組んで動物を山に上げる日 (Inalpe)と、山から下りてくる日 – Désalpe (仏 デザルプ)、 Alpabzüge (独) を祝います。

山から下りる日は9月の中旬から末にかけてです。写真は2011年のSt-CergueでのDésalpe。飾りを付けた牛と正装の羊飼いを先頭に、ひと夏を高地で過ごした動物ご一行、カウベルを持った人間たちがパレードを行います。牛を飾り立てる例が大半ですが、牛の装飾はほどほどで牛飼いの方が盛装のところもあります。

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