Via Gottardo (72) Gottardo峠とスイスの始まり

ミラノの教会で。学生さんが内部を測ったりしていた。(2014年4月)

峠自体は常にTicino州だった(ここにハプスブルクの城を建てる漫画の設定も無茶ですわ)けど、Uriなどスイス連邦はTicino州全体を併合し、Ticino州を植民州状態にします。それは収入源は峠もそうかもしれないけど峠に至るまでの街道に設けた税関からの通行税、人夫の働き口や旅籠などで得られる収入によっていたからです。

建築科の学生なんだろうか。こういうスゴイ建物に日々接して大きくなるんだー

峠の南に位置するUri州は、悪魔の橋とも呼ばれる橋を峡谷の難所にかけ危険な個所をなくし(当時の土木技術では大変だっただろうな)、また峠の南、Ticino州内でUri道と現在でも称される道を整備してGottardo峠の通行を促進していましたよね!峠というのは決して関所を設けるなどして人の通行を妨げるものではなく、峠をどんどん利用してもらってその前の自分の所も通らせて通行税を取る、地域振興をする、そういうもんです。

そうして力をつけた学生さんだが、イタリア国内ではなかなか職につけなくてスイスの建築事務所で高給を稼ぐようになるんだろうなあ。

数ある通り道から選んでもらえるには自分の領土内での道普請に努めなければなりません。手入れをサボって道が荒れると、荷役人はあっという間に違う道を通るようになり、税収は急激に減ります。そういう点ではGottardo峠は数ある峠のうちの一つに過ぎなかったのです。まあ、そういうこともあってUri&スイス原初連邦州は金を生む峠に続く道の整備をしただけでなく峠のあるTicinoを植民地にしたわけですけどね。

Gottardo峠がスイスにとって特別なのは、ここから国が始まったからです。この峠は使える!通行税取れる!と判明すると、ハプスブルグ家と地元との間で通行税の取り合いになりました。そうです、世の中を支配するのは金です(そうじゃないこともあると信じたいけどさ)!

ミラノつながりで2015年のミラノ食万博。昔は博覧会という人がわんさか集まる機会があってね、というのが昔話にならないことを願う。

地下資源皆無で山ばっかりで農作物生産もイマイチの辺境の地、どの王朝からも興味を持たれなかった地だったけど金になる木を放っておくことはない。スイス民族というものもスイス王朝というものも存在せず、スイスという国の起源は峠の利権を自分で管理したい地元民の支配者ハプスブルク家への対抗策でした。

日本館の前の樽酒。うーむ、私はいつ日本に帰れるかなあ

ハプスブルク家の支配は、この時契約を結んだ3州だけではなく、もっと広い範囲に及んでいました。この3州だけが特別に厳しい支配を受けていたとは思えませんし、当時はハプスブルク家の他に神聖ローマ帝国、ローマ法王などから重層的に支配されていたわけで、3州が、それら全部から完全に自由な独立なんてもんを考えていたとは私には思えません。

そのミラノ万博でのスイス館。山ですね~スイスの中央山塊がヨーロッパの水源になってるという展示だったかな。San Gottardoって見えますね。おぉ、話がつながった!おいしい水なくして食もないのです

独立の契機は「金」で、こう言ってしまうと夢がないように思われますが、もっと豊かな暮らしがしたい、自分もそうだが自分の子供、子孫にもっと良い生活を送らせてあげたい、と願って隣近所と力を合わせるというのは悪くないです。そして最初の山岳3州に、峠を利用して既に興っていた絹織物産業を発展させたい都市民であるチューリッヒ州や湖を挟んで北側のルツェルン州などが、自州の利益になるだろうとの判断で、加わっていきました。

Comoの大聖堂。Milanoとライバル関係にあったComo。Comoにはジョージ・クルーニーの別荘があるらしい

共通の利益のために手を結んで共通の敵に対抗する。だけど加盟はあくまでよりよい未来実現のためだから、自分の州の利益は譲れない。国全体、連邦としての決まりごとより自分の州の決まりごとが優先する、自分の生活に関わることは自分で、国民投票で決めるというスイスの連邦制の大原則はこの辺りから来ています。王様と運命を共にする、とか1億総懺悔はないし、そもそも異なる民族・異なる言葉を話す人たちが合わさった形態なので、能力があれば、規則を守って社会に溶け込んでくれればの条件付きですが外国人にも働きやすい国の一面もあります(近年はスイス国籍取得となると大変に厳しいけれど)。連邦の拡大に当たっては、その後、Ticino州しかり、Vaud州しかり、自分から加盟したというより武力で併合させられた州もでてきますがね。

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