歩くことを考える映画 Sur les chemins noirs

主演・オスカー俳優Jean Dujardin、監督・Denis Imbert。英語タイトルはOn the Wandering Path。フランス語の原題はSur les chemins noirs。chemins(道) noirs(黒)とは、車道や整備されたハイキング道の陰で忘れられつつある、フランスの農村で一昔前まで歩かれていた道。

映画の元となったのはSylvain Tesson氏(1972年生まれ)の本。 Tesson氏は2014年8mの高さから落下し瀕死の重傷を負い、退院できたらフランスを歩いて縦断すると決め、翌2015年フランス南東Mercantouから北西のNormandieの海までフランスを斜めに1300㎞を踏破。翌2016年にその体験を出版。

Tesson氏が歩いたChemin noirはハイキング道ではないので道標もなく、2万5千分の1の地図を手に自分でルートを決めてました。季節労働者が利用して忘れられた道。この数十年の変革から取り残され消えつつあるフランス農村部の一部分。

https://ignrando.fr/fr/parcours/410902-sur-les-chemins-noirs

フランスのハイキングサイトIGN randoがSur les chemins noirsのコースを地図上に落としてくれています。

https://ignrando.fr/fr/parcours/410902-sur-les-chemins-noirs

絶景や観光を目的としたキレイどころを巡る道ではないので一般向きではありませんが、こんな感じです。

水色の線が氏がたどった道。https://ignrando.fr/fr/parcours/410902-sur-les-chemins-noirs

映画の方も、是非ともフランスを歩きに行きたくなる景色を見せつけてくるわけではありません。それよりも、登山者やハイカーなら心当たりがある、特に見通しが良いわけでもないところで汗を流して黙々と歩いている際、単調な歩きの中で過去の出会いや別れが思い出され、ひたすら歩きながら反芻すること。歩くって何なのか?何故に大変な思いをしてまで人は歩くのか?

Tesson氏は冒険家、シベリアなど、つまりフランスからずーっと離れたところを旅して書く作家でしたが(まったくもって未読)、氏によると、怪我をして初めてフランスについて書こうと思った、と。子供時代から高いところに登るのが大好き。教会の鐘楼に外側から登って一晩を過ごし、クライミングもお手の物。屋外、自然の中で眠るのも慣れたもの。フランス横断1300㎞中でも荷物はとても少なく、行く先々の郵便局に荷物を送って受け取り、送り返していた。テントじゃなくちょっと雨避けになる程度の布とポールのみ。野営時はオオカミ避けに焚火は必須。ありあわせのもので火をおこすのが上手いなあと思ったら冒険家なのかーーー

行程の高低イメージ。前半Massif Central(中央山塊)等の山岳地を越え、最後は海岸沿い。https://ignrando.fr/fr/parcours/410902-sur-les-chemins-noirsより

Tesson氏は9月から11月にかけて歩き、映画の撮影も同じ季節に行われています(映画の撮影ではほんの一部分しか歩いてないけど)

この人のように日が暮れた所でビバーク、ができない場合、フランスのロングトレイルはなかなか大変なんだよなあ(公共交通機関が大変なことになっているから)。私はフランスでのハイキングは一日・22㎞しか歩いたことないのですが、近いうちにご紹介出来たら、と思います。

Sur les chemins noirsトレイラー(英語字幕付き)

Sur les chemins noirsについてSylvain Tesson氏インタビュー:

https://www.gallimard.fr/Media/Gallimard/Entretien-ecrit/Entretien-Sylvain-Tesson.-Sur-les-chemins-noirs#

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