スイスの政治(8)2007年の閣僚選挙は謀略による大激震

国民投票のポスター 2013年6月 閣僚選出選挙を議員による選挙じゃなく、国民による選挙に!という投票。否決

最後にもう一回だけ閣僚選挙の話。2022年の選挙結果のサプライズ度合いは2007年12月の閣僚再任承認投票以来の衝撃、と言う記事も見かけましたが、それは4年前の2003年から始まります。

閣僚選出選挙を議員じゃなく、国民が選びたい、という議案ー否決

7人の閣僚は現在4つの上位政党が2、2、2、1人割り当てを受けていますが、各政党が獲得する議席の数は年月を経て変動します。

Bern 時計塔を修理中(2018年)

現在最も当選議員数が多い(といっても過半数には及ばない)スイス国民党(SVP/UDC)は2003年10月の総選挙で、それまでの4位から首位政党に躍進。それに伴いそれまでの閣僚の割り当てを1人から2人に増やすことを要求。躍進の立役者Christoph Blocher(ブロッハー)氏は、それまで2人の枠を持っていたスイスキリスト教民主党(PPD/PDC)の1枠を奪い取る形で閣僚に就任。1959年来の閣僚数の配分「マジック・フォーミュラ」が変わりました。しかしスイスの閣僚の慣習に反し、Blocher氏は閣僚になっても移民制限などについて過激な発言を繰り返していたこともあり、任期満了となる4年後の2007年、再任を問う選挙で落選した「超衝撃事件」(通常は再任、再任されなかったのはわずか4人)。

社会民主党、緑の党、それに4年前に1枠を半ば強引に奪われたキリスト教民主党が秘密裏に連携、Blocher氏へに対抗して、Blocher氏と同じSVP/UDC所属議員だけど立候補も何もしてないEvelene Widmer-Schlumpf氏(女性)に投票、Blocher氏を追い落とします。1日の考慮期間を与えられた(通常は投票後、即宣誓する)Widmer-Schlumpf氏は翌朝就任を承諾

当然ながら激怒したBlocher氏とSVP/UDCはWidmer-Schlumpf氏に閣僚のポストを辞退するように、次に党から除名しようとしますが、スイスでは政党も「州支部」が連携したものなので、党が個人を除名することはできず、翌年6月にWidmer-Schlumpf氏の追放を拒否した、彼女が所属するグラウビュンデン州支部を支部ごと除名。SVP/UDCのグラウビュンデン州支部と、当時SVP/UDCのもう1枠の閣僚だったSamuel Schmid氏が所属する、やはり彼女の党からの追放を否決したSVP/UDCベルン州支部が共にSVP/UDCを離脱、新しい政党スイス保守民主党(BDP/PBD)を結成精神的に疲れ果てたSchmid氏が2008年末での閣僚からの退任を表明、BDP/PBDは上位4党に次ぐ、5番目の規模の議員しかいない党なので、空いた1枠がSVP/UDCに与えられ、後任閣僚選挙が行われました。この選挙で再び立候補したBlocher氏を大差で破り閣僚になったのが、2022年末での退任となるUeli Maurer氏

ベルン駅前

次回、この話の続きを少しだけ書いて、政治の話はひとまずおしまいにします。

ベルン駅から歩いても行けるパウルクレーセンター(ZPK)。ZPKを後ろから見たところ

2007年12月12日、選挙の夜の報道(テレビ映像なのでスイス国外では観られないかもしれませんが)

https://www.rts.ch/play/tv/19h30/video/retour-sur-la-manoeuvre-politique-des-verts-du-ps-et-du-pdc-pour-evincer-christoph-blocher?urn=urn:rts:video:1491880

2003年の閣僚選挙の公式記録

https://www.parlament.ch/fr/%C3%BCber-das-parlament/archive/retrospective-des-elections/election-conseil-federal/2003-12-10

2007年の閣僚選挙の公式記録

https://www.parlament.ch/fr/%C3%BCber-das-parlament/archive/retrospective-des-elections/election-conseil-federal/2007-12-12

閣僚の新任選挙と再任選挙のルール

https://www.parlament.ch/fr/%C3%BCber-das-parlament/archive/retrospective-des-elections/election-conseil-federal

内閣の構成

https://www.admin.ch/gov/fr/accueil.html

2003年の因縁が2007年に、という新聞評論記事:

https://www.letemps.ch/suisse/on-paie-laddition-2003-2007

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