スイスの就職事情(番外編)日本からスイスで働きたいと思ったら

スイスでは外国人が多く働いている、だったら日本からスイスでの求人に応募できるのか?結論として、日本人(このブログは日本語で書いているのでとりあえず)がスイスで働くには幾つかの越えなければいけない障壁があります。インターネットに掲示された求人ならば世界中から閲覧できます。求人広告が書かれているのがドイツ語やフランス語でだったらそれらの言語に習熟していることが求められますが、英語で書かれていたら英語で応募ができます。が、その際にスイス国籍でなかったらスイスでの滞在許可証の有無、その種類の別を記入する必要があると思います。

Schengen area:青で示されたのが加盟国26か国。オレンジ色がEU加盟国で将来的には加わるだろう国々。Wikipediaからの図

スイスは2008年にSchengen(シェンゲン)条約に加盟しました。加盟国は26か国、EU加盟国の22ヵ国に非加盟国4か国を加えたこのエリアでは国境でのパスポートチェックが廃止され、人とモノの自由な行き来が可能となりました。エリア内の住民だったらどこに住んでもどこで働いても可。エリア内の国籍か滞在許可証を持っている人だったらスイスに移り住むも可、生活費の安い周辺国に住んだまま働きに来るのも可!

ジュネーブのCollége de Calvin ここは高等学校に当たる学校で、旧市街の中。中央のフクロウのブロンズ像は創立400年の1959年に。

一方、日本はシェンゲン加盟国ではないので査証(ビザ)なしでの滞在は90日を超えることはできません。この90日間というのは、最初にシェンゲン加盟国のどこかに入国した日から180日の間に、加盟国での滞在合計が90日間を超えることはできないという計算です。わかりにくいですが、本気で知りたい方はお調べください。

上の写真で右手に少しだけ見えてる建物。外階段の下には

早い話、日本人を採用するにはビザを取得しなければならず、そのような面倒な作業をいとわない専門の人事課や事務所がある大きな会社、国際機関、研究所、大学であれば採用の可能性は高まります。が、小さな事務所だったら面倒なビザの申請なしで雇えるシェンゲン条約加盟国の出身者が優先されても仕方ないでしょう。ビザ申請の労に値する特殊技能があることが必要です。

右手の建物の階段下はこのようになってまして、この天井には三つの石板がはめ込まれてあります

特殊技能、一昔前までは寿司をはじめとする日本料理の職人として日本人の需要があったのですが、この頃では日本人じゃなくても日本食を作れる段階に入ったように思われます。私が住んでる町でも「寿司」「ラーメン」「鉄板焼き」の店が多数ありますが、日本人経営の店は少数派です。私はこれらの店で食べたことがほとんどないので味の評価はできませんが、日本でフランス料理やピッツァリアやらを楽しんでいるように、日本食も世界でその地域流に発展していくのでしょう。

一枚にはギリシャ文字で

国際機関や研究所、多国籍企業での必要言語は英語でしょうが、現地の人々を対象にする仕事ではその地の言葉に習熟していなければなりません。スイスで医者として働くと本当にびっくりするくらい稼げるそうですが(こないだ統計が出たらスイス人もびっくりしたくらい)、開業には現地の言葉でコミュニケーションできることが必須で英語だけじゃ許可が出ないらしい。一方、鍼灸医(近頃西洋医学じゃないのも流行り)で常に通訳がついてるけど大繁盛、という話も聞きました。労働ビザは、雇用側が手続きをしてくれる他に自営の場合は別となるのでしょうが、この件については私は詳しくないです。

ヘブライ文字

ずっと書いてきたように、今のスイスでは就職の際ある程度の仕事経験があることを求めています。企業には職場経験のない新人を一から教育して一人前にしようなどという気はさらさらないです。職業訓練を終えて国家資格を持つ人材を即戦力として求めています。ということは逆に、大学を卒業していなくても、もっと言うと高校を出ていなくても、キャリアと実績があればスイスで働くことは可能です。現実には数年以上10年以下の実務経験がある人材が求められています。スイスでは日本より更に老後にお金が必要なので、それを考えるといくら稼いでも心の安心は得られぬようですが、スイスで何年か働けばそれなりに遊びに行ってもそこそこのお金がたまります。

ラテン文字。昔はこれらの言語は勉学に必須でした。現在も弁護士を目指すにはラテン語を学んでなければ大学の法学部に入れない

機会があったならば是非一度日本を離れて働くことをお勧めしますが、シェンゲン加盟国国籍じゃない故の不都合は、失業時と同時に滞在許可がなくなり、失業保険を払ったのに失業手当(本来ならば2年!支給されるが最初のころのビザは一年更新で雇用されてないとビザが更新されないという不都合)がもらえないでスイスを去らなければならない可能性がある、という理不尽さです。スイスでの就労を考えている方はその点をちょっと頭に入れておいてください。

1559年創立時はCollège de Genève の名でしたが1969年にCalvinの名になりました。1566年にはジュネーブの人口15000人に対し学生が数が2000人!でした

ビザは労働ビザの他に、婚姻によっても得られます。シェンゲン加盟国国籍の人と結婚していればその国の滞在ビザがもらえ、それがスイスでも適用されると思います(断言はしないけど)。滞在許可証(ビザ)と国籍取得は別の話で、現在は国籍取得はずっとずっと困難です。特にスイスは厳しいし、日本国籍を放棄しなけりゃならないし。婚姻もビザ取得が目的の「白い」結婚防止目的で国際結婚の場合には昨日今日の申請でOKというわけでは全くありません・・・

壁には”POST TENEBRAS LUX” (=après les ténèbres, la lumière)はラテン語で”暗闇の後に光” の意味でCalvin派のモットー。ジュネーブの色々なところで上部のジュネーブの紋章とともに見つかります。1558とあり、学校の建物が造られたのは1559年ですが、創建を前年の1558年とすることも。

写真は2019年5月

Copyrighted Image

error: Content is protected !!
テキストのコピーはできません。