スイスの若者の就職事情(8)高等教育

Erlach(Bern州)昔の城に市庁舎と学校が入ってました。学校は数年前に閉校して別建物へ。

日本で高校への進学率が98%を超えている今、時折話題になるのが中退者をいかに防ぐかです。高校は義務教育ではないのだから、行かなくても途中で辞めても本来は構わないはずです。しかし現実には家庭が経済的に困窮している状態でも本人か家族が借金をしてでも高校へ、さらには大学へ通わせなければ「いい」仕事に就けないということになっているのは何故なのだろう?

Ligerz(Bern州)の古い建物が連なる中に、昔学校として使われていた部分。道が細くて建物の全景が撮れない

どう工夫して指導しても、能力別クラスにしても学校の勉強が嫌いな生徒はゼロにはならないでしょう。今、高校をドロップアウト(この言葉もすごいな)してしまうと、その先には将来の生活に必要な、働き出すための救済措置も代替も受け皿も何もない(多分)。働くためのスキルが何もないまま世の中に一人で放り出されてしまう。高校や大学が次のステップで働くために大層なことを教えているわけではないのだけれど。学校でのいじめが原因で命を絶ったり引きこもる若者に、学校だけが全てではないよ、と言いたいけれど、実際は学校を途中で飛び出ると大変だとは誰でもわかる。学校外に一体どこに居場所を見つけたらいいのだろうか。

Echallensの城 ただいま改修中。右部分は学校

学生時代は勉強するだけでなく、友情や人格形成やスポーツや教養の為の期間かもしれない。でも3年間何を学んだかではなく、3年間机の前に座って黙って耐え忍べる能力が、会社に属して自己犠牲できるスキルとして評価されるのだとしたら?今まではそれでも何とかなってきたけど、この先も果たしてそれでいいのかな?

古い建物ばかりでは何なので。Belvédèreの学校施設 最初の建物は1938年築(Lausanne)

「欧米の大学は入るのは簡単だが出るのは大変」と日本と比較して言われるけど、これって半分しか合ってない。本当は入るのも出るのも大変。一発勝負の「入学試験」は無いかもしれないが、入学には大学で学ぶのに必要な学力があるか、高校までの課程を修得している証明、いわゆる大学入学資格が必要です。州によっては中学での点数が足りていないと高校に進学する前に一年(!)補習をうけなければならない。

Établissement Secondaire du Belvédère(Lausanne)

大学に入ってからも、思ってたのと違う、ついていけない、と転部してやり直したり大学に通うこと自体を辞めたり。大学の授業料は日本に比べると格安だけれど親元を離れて暮らす場合など、生活する費用がかさみます。大学も高校も辞めること自体は「悪」とはみなされてないが、次はどうするんだ、早く自活してくれ、との親のプレッシャーは強いし、中卒や高卒で職業訓練を始めた友達はそろそろ本格的に稼ぎ出す頃、後れを取ったのではないかと焦ってくるし、とスイスでも大学生の悩みは多いです。

Éracom (école romande d’art et communication) は芸術系の学校 1942築(Lausanne)

大学卒業者に(日本では実際は卒業見込みの時点だが)大々的に「新卒採用」が用意されているわけではないです。30年位前までは、連邦工科大学を卒業すると、3年後でも、いつでもいいから是非うちに働きに来てください、と日付が空欄の就労契約書がいくらでも手に入ったそうです。スイスで外国人が働くのが非常に難しく、大卒者の人数も限られていた古き良き時代の話。今のスイスの職場には日本のように大卒者をイチから育てようなんて意図はさらさらないのでインターンなどで実績を積んで自分の能力を売りこまなければならないし多くの職場は最初の3か月は本契約前のお試し雇用期間。日本でもそうかもしれないけれど、こちらは本気のお互いが試験期間。そして就職しても、終身雇用制度ではないのです。

Établissement primaire et secondaire du Villamont 写真は1888築の建物だが、後ろに新しい建物の一群あり(Lausanne)

写真は「学校」。2019年の撮影。今回の最初の写真はCollège de Villeneuve (Vaud) 学校の建物って正面に時計があることが多いですね。以前に城として使われていた建物に市町村庁舎と学校が入った例は多いです。学校部分は今ではもっと大規模な新しい建物に移っていることも多いです。

前回に関連してタンポポ(手前)と菜の花(後ろ)4月22日撮影

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