スイスの若者の就職事情(4)Stage 自分に合う仕事を早く見つけよう

夏休み明けには「今年も○○人がApprentissage職業訓練を始める」というニュースを耳にします。その際毎度話題になるのが、15歳で仕事を始めて65歳の定年になるまでの50年後、いや10年後にその仕事がどうなっているのか、存在しているかどうかさえ誰にもわからない、という話。今ある職業のかなりの部分は将来的に人工知能にとってかわられる一方、今は姿かたちもない職業がきっとあるけどそれは誰も知らないというオチ。

さて、普通科高等学校、職業訓練に加えて第三の選択肢となるのが語学研修やStage(スタージュ)などです。Stageは前段階のプレスタージュ、pré-stageなど色々バリエーションがあるのですが、職業訓練の短期間版、お試し版、体験版のことが多いです。期間は1週間から数か月。もっと長いのもあるし、職業に就く前の若者だけでなく、すでに働いている人が次のキャリアアップのために行うStageもあるし、高校の休み期間に参加できるものもあります。

Stageを職業訓練の前に義務付けているところ、人気のある職業訓練先が人数を制限するために選抜方法として用いている例もありますが、要はその職業を体験させるのが目的です。スイスでは大学の医学部は、まず他の学部の前期課程を経てからでなければ進めないのですが、さらに医学部に入る前に病院でのpré-stageやStageを義務付けてます。憧れだけで始めて「ミスマッチ」だったら、本人の時間もお金も税金ももったいない!そう、その仕事が自分に合ってるか、やってみなきゃわからない!向いてなかったらさっさとやめて、次を探そう!

木の床 スイスの住宅で使われるのは薄い木の板ではなく分厚い木なので良質の床はものすごく長持ちします。

私も50歳を過ぎてからこのPré-stage(2か月だった)をとある職場で行いました。Stageの類は最後まで終えれば履歴書に一行足せるのに、1週間足らずで辞めちゃう人もいて、熟年の私がやってるのに体力が有り余ってる10代が辞めるとはけしからん!と思ったら、「合わないと思ったらやめていい、そのためのStage」なんだそうです。日本と違って履歴書に空白の時期があってもそれ自体は問題にならないのだから無理に頑張らなくてもいいらしい。一方、別の17歳は「実社会に出たわ!人の役に立ってるわ!」と大興奮でした。

パン職人の競技。おかずパン、甘系など規定の数種を作り上げなければならない

Stageってお給料が出るところも多いんですよ。大した額ではないけれど、ここでお金を貯めて次につなげてもいいですね。Stageへの応募には履歴書に加えて志望動機、語学力証明書も必要ですが。机の前での勉強には興味がないけど、義務教育のあと特に何をしたらいいかわからなかったら、とりあえずStage。公式の修了証書も来るので保管して次の応募先にコピーを送ります。ボスには推薦文を一筆もらっておこう。

熱気で疲れたら一息。

Pré-Stageで久々にお給料をもらった時はとてもうれしかったです。ここから年金も税金も差っ引かれましたけど、それはそれで「社会人」への一歩ですね、まさに。

車の整備1

若いうちならやり直しがききます。何度でもStageをやってみよう。実際、Stageには職業訓練や普通科高等学校に行ったけど「合わなかった」からやめてきた人も多いです。中途でやめるのは「悪」ではないです。そりゃあ一発で自分に合った何かが見つかればいいですが、そんな人ばかりじゃありません。ミスマッチのまま長く続けるのはきつい。知り合いは高校の夏休みにテレビ局でStageをして、結局大学へ進学しました。大学の学費は日本に比べると登録料程度の安さですが、それでも生活費諸々かかります。Stageで気に入ったらその職業にすすんでもいいし、もうちょっと考えようと思ったら大学に進んでもいいし。そんなこんなで大学入学者の年齢はバラバラです。

車の整備2

また警察や看護師学校など、18歳以上からしか訓練を始められない職種もあり、義務教育以降その年齢になるまではStageで経験を積みながら待つ話も聞きます。「就職」後もStageとFormation(教育)は続きます。今の時代、職場でスキルアップを求められることも、今の仕事とは違う領域に活路を求めることも、職業自体が変わっていくことも避けられません。失職した場合も含めて、大人でもStageに就くことは全然珍しいことではありません。

写真は2018年9月14日 SwissSkills、BernEXPOで

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