スイスにおける若者の就職事情(2)義務教育が終わったら

職業訓練の話の前に、スイスの教育制度について。これが例によって「カントン(州)によって違う」ので、一概には言えないのです。大体は同じでしょ、と思うでしょ。ところがどっこい、今でこそどの州も秋入学だけど、数十年前までは日本と同じ春入学の州もあったくらい、州によって色々違う!しかも割と柔軟に時代に合わせて変える度量はあるようで昔と今とでもこれまた相当違っていて、「絶対」の基準などはないのです。そもそも話されている言語が違うのだから、学校で扱う第一外国語も第二外国語も変わります。

プログラミングなどパソコン作業の競技もあります。見ても何やってるのかよくわからない職種に関しては、その横で子供や生徒を対象に体験や説明コーナーを設けています

というわけで、これから書くことはスイスの26州全てに当てはまるわけではなく、また限られた人数のスイスに住む人から聞いた例に過ぎません。義務教育には初等教育と中等教育があり多くは15歳前後で終えます。50年位前までのチューリッヒやグラールス州では小学校6年間は全員同じクラス、中学校3年では4つのレベル別のクラスに分かれたそうです。同じ頃、ベルン州では小学校4年・中学校5年、つまり、10歳かそこらで高等教育を目指すトップクラスから数レベルに分けられ、その後の職業人生がおおよそ決まっていたわけです。

その後、義務教育で学ぶべき領域も増え、職業も変化したこともあり、子供の教育ももっと柔軟に、ということで中等教育でのクラス分けも数学は苦手だけど国語は得意などと科目によって生徒のレベルを分ける程度のことが多いようです。また初等教育6年、中等教育3年の所が多いようですが、習熟度テストの有無など州によって大幅に異なるようです。(4月9日追記:義務教育が4歳から始まって幼児科4年、初等科4年、中等科3年の計11年のところも多いようです)

タイル貼ってます。

小学校でも落第があります。落第を経験した人は直接知らないのですが、知り合いは早生まれの双子で体が小さかったので、二回落第して同じクラスになった体が大きい子と用心棒になってもらう目的で仲良くし、その後も友情を保ち10代後半には3人一緒にスイス一周自転車旅行にも出かけたそうです。スイス人に聞くと、授業が分からないんだからもう一年やって何が問題?むしろ、小学校で分からなくなったらその後が厳しいでしょ、と言いますが、「全員一緒に揃って」が重んじられる日本だと難しいでしょうね。

Wall of Fame・左官職人なだけに「栄誉の壁」 1991年からの歴代優勝者が称えられています。

落第もあれば飛び級も。昔は落第は良いけど飛び級を禁止ていた州もありました。一学年すっ飛ばして上にあげる他に、特定の科目のみ近場の大学などの高等教育機関で講義を受けさせることもあります。

工作機械、マザーマシン、機械を作る機械、これらの取り扱いが国の工業力の肝です。

義務教育終了後は(1)高等学校(普通科/スポーツや芸術科のそれぞれの教育機関に相当)進学、(2)職業訓練への道、(3)次の進路への準備期間として語学研修、職業訓練前の研修・・・に大きく分かれます。

なんと、レストランでの接客業部門のコンペもありました。スイスにはホテル学校が多数あり、世界中から修行に来ます。

日本では2018年度の高校進学率が98.8%(1974年で90%を超していた)、短大を含む大学進学率が57.9%なんですね。スイスの人に聞いたところ、1960年生まれ(つまり1975年時に15歳)で高等学校に進んだのが2割、8割は15歳で職業訓練についたそうです。今ではスイスでも高校進学率が6割を超えてるようですが、それでも4割は義務教育を終えると職業訓練の道へ進みます(数字は個人の感覚的推測で公式発表数字ではありません)。

お客さん役はどうやって決めたんだろう?私ももてなされたい!

今回読んでくださった方に浮かんだであろう疑問:州を越えて引っ越したら子供の学校はどうなるんだろう→(答)昔はそれはそれは大変だった。国を変えるよりひどいとまで言われたそうな。

写真は2018年のSwissSkillsにて

SwissSkillsの公式サイトから:スイスの教育

https://www.swiss-skills.ch/fr/career/tes-perspectives-de-carriere/le-systeme-suisse-de-formation-professionnelle/

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