10数年前の4月の思い出、私は「アパート内改装のための立ち退き」を迫られました。その際、どうせ床や壁、台所、洗面所(確かに水回りは年季が入っていた)まで全面的に交換するのだから、と、ほどほどに掃除するにとどめたところ、引き渡し確認に来た不動産管理会社のお兄ちゃんに怒られました。怒られた、というよりビックリされた、呆れられてたのかな、と今になっては思います。
ほどほどの掃除、といっても、日本で引っ越しした際の掃除よりはずーっと綺麗にしたのですよ。でもスイスの場合、引っ越し時には、直後に次の人が気持ちよく、まるで新居のように入居できるように、完璧に掃除しなくてはなりません!不動産管理会社のお兄ちゃんは「僕は優しいから1週間猶予をあげるよ」(この時は、改装工事が控えていたので、次の入居者はいなかった)と告げ、私は既に電気を止めちゃってガランとした部屋を、今までの人生で無かったほどがむしゃらに磨き上げました。ピッカピカでした。我ながら惚れ惚れし、これだったら住んでた時から、この位きれいにしとければよかったかも~と思っても後の祭り。
その後、2回引っ越し、つまり不動産管理会社の人と私と次の入居者、もしくは、直前まで住んでた人との3者面談、ならぬ3者確認作業を3回行いました(今住んでるのは新築物件なので4回目はない)が、あれは本当に大変。できればもう二度とやりたくない(でもあるんだろうなあ)!
前にも一度書きましたが、不動産管理業者は不動産を紹介したり仲介するのが業務ではなく、家主と借主の間で円滑に家賃を徴収し、家のトラブルに対処するのがお仕事。スイスでは住宅需要がひっ迫しているので、大抵の場合、こちらが住居を引き払う際には次の入居者が後ろに控えています。30分から1時間程度の三者面談を境に旧住人から新住人に鍵が渡され、住居権利が移動し、1日たりとも、否、1時間たりとも住宅が遊んでない(家賃が徴収され続ける)という凄いシステムです。掃除専門会社に頼みたいなら、三者面談より前に、出ていく側が自費で行います。
家を借りる際には家賃の2か月程度、日本での「敷金」に当たるものが、銀行で不動産賃貸用として凍結されるのですが、契約を解除して退去後しばらくして、全額戻ってきました。日本での引っ越し退去時には、仲介の不動産屋さんに「ああ、掃除はこちらでやりますよ~」と優しく言われますが、敷金からしっかり差し引かれるんですよね。その点、スイスのシステムは良かった。ちなみにスイスで礼金は無いです。住処を見つけるには、自分でコネを駆使するかネットに載ってる不動産情報にひたすら応募し続けて運を待つしかないわけで、不動産屋さんは「紹介」業務はしてくれません。
それまで住んでた住居を引き払う日と、新しい住居に入れる日の間に何日かあれば楽ですが、上手く調整がいかない場合は家財をトランクルームに預けるなどするしかないでしょうね。2軒目のアパートでは、前に住んでた人が、三者面談の翌日にベルギーに帰るスケジュールでした。大きめの家具は事前に送って、身の回りのものは車に積んで、その晩は友人宅に泊まる・・・それでも完璧に掃除がしてありましたので、頑張ればできるのだな。
掃除も年を取ったら大変です。高齢の知人は専門業者を頼み(当然高い!)、三者面談時に不備が指摘された場合は掃除業者が費用を負担するという契約でした。三者面談時には掃除だけでなく、例えば備え付けの家具や備品などの状態もチェックされます。スイスの住宅は収納スペース、コンロ・冷蔵庫などの台所の電化製品(システムキッチンということ)、洗面所の家具なども付いたものが多いですからね。ベランダや別にある地下倉庫、郵便受けのチェックも忘れずに!
ちなみに、賃貸住宅において、板張りの床は25年(だったかな)、台所の流しは○○年など、項目ごとに改修や交換を要求できる、つまりそれ以上の年月が経っていたら、借りた際の原状が回復されてなくてもOKなどの規約があります(全国規模の規定らしくネット上に公開されている)。三者面談時に、床タイルのちょっとした破損や壁の経年劣化、傷なども記録されていました(私らの入居より前に欠損)。同じ不動産管理会社の三者確認時でも、10年前は3枚複写紙で、リストに読めないようなひどい字で記入されてたのが、5年前にはアプリ形式で、タブレットで写真をバシャバシャ撮って記録してました。
不動産管理会社は決して怖いだけでなく、窓枠が古くてペンキがボロボロ落ちること、古いので暖房効率の点で問題がある、と素敵な作文で訴えたら、時間はかかりましたが最新式の二重窓に替えてくれて、防音・断熱が格段に良くなって感動したこともありました。不動産管理会社にとっても家主にとっても、不動産の価値を維持・上げること、なるべく優良な借主に居てもらう事は重要なんですね。

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