フィギュアスケートの欧州選手権が先週エストニアのタリンであり、なんと男子シングルでスイスのLukas Britschgi選手が優勝してしまった。「してしまった」という言い方をするのは、ショートプログラムで1位と約10点以上離されての8位だったからである。Britschgi選手は2024年のNHK杯で鍵山選手、宇野選手に続いて3位だったので日本でも若干馴染みがあるかもしれない。2023年の欧州選手権で銅メダル。今回、開幕前はメダルの可能性、と期待されたが(でも優勝は誰も考えていなかっただろう)ショートプログラムで8位と出遅れ。しかし「緊張から解放され、何も失うものは無い」「一つ一つのエレメントに集中し」、ほぼ完璧な演技。高得点を叩き出し、大きく差をつけて暫定1位の椅子に座ったその時には本人もテレビの前の視聴者も、まあ、あと7人残っているからね~ 解説者も、ちょっとだけミスったところが完璧だったら4~5位に食い込めたかもね、と言ってたくらい。
しかし、その後滑った有力選手がプレッシャーで信じられないくらい次から次へと失敗しまくり。連鎖反応って怖い。いや、流石に最終滑走者の彼だけは、あのバク転を決めちゃう彼だけは別次元だからきちんと決めるよね、と思ったAdam Siao Him Fa選手さえもボロボロと崩れ3位に。結局Britschgiの後で滑った選手の中で唯一実力を出し切って満足げな表情で演技を終えることができたイタリアのMemola選手が2位に入ったのだが、後続の7人中他の6人の呆然とした顔面蒼白の顔を見るのは本当に心が痛んだ。
決して一か八かのチャレンジングな演技プログラム構成にしたわけじゃないだろうに、連鎖的にドンドンプレッシャーがのしかかるのだな。サッカーだって通常状態なら誰もPKを失敗しないのだろうし。メンタルを鍛えてるだろうトップ選手でもそうなるのかあ、とびっくり。
Britschgi選手は「(優勝インタビューについては)本当に何も準備してなかったので」と言っていたが、性格の良い努力家なのだそう。10代半ばで簡単にジャンプが飛べてしまう天才肌も多い中、遅咲きの26歳。少し前まではフリーに進められるかどうかを心配していたーとテレビの解説者。
たかが欧州選手権というなかれ、あのランビエール氏でも同選手権では銀メダル3回、優勝は一度も無し(世界選手権では2回優勝してるが)。スイス男子選手の欧州選手権制覇は1947年のHans Gerschwiler氏以来とか。それからものすごく変わったよ、と私は伊藤みどり選手のことをなぜかずっと思い出していた。