Bruno Ganzの明るい映画 Pane e Tulipani

Pane e Tulipani(パンとチューリップ)はスイス映画というわけではなく、イタリアとスイスの出資でSilvio Soldiniというイタリアの監督のもとイタリアはベニスが舞台の2000年に公開された映画。邦題は「ベニスで恋して」・・・私は日本公開時には観ていないのですが、出演しているBruno Ganzが2019年に亡くなった年にフィルムセンターで追悼特集の際に観て、Play Suisse(スイス国内限定でみられるプラットフォーム)で久しぶりに見たらやはりとても楽しい映画だった。この映画、役者さんが全員素晴らしい。うん。

主人公の専業主婦(Licia Maglietta)が家族と一緒に参加したバスツアーの帰り、トイレ休憩の間にバスが発車してしまいます。悲しいかな妻の不在に夫も子供も誰も気づいてくれなかったわけですが、そのあたりもそれほど悲観的にならずに、ちょっとした偶然(ヒッチハイク)からあこがれのベニスで一人で一泊。一泊のつもりが電車を逃し次の日も・・・所持金は乏しいものの、割と簡単に住むところと仕事が見つかり、イキイキとこちらでの生活を始め・・・

専業主婦が狙ったわけでなく、なんとなく偶然に知らない土地で割と簡単に住居と職を見つけて新しい生活を始める、というとてもうらやましい話で私が思い出したのがAnne Tyler(アン・タイラー)の小説「Ladder of Years 歳月の梯子」。(1995年)。こちらは携帯電話がそれほど無い時代だったのかしら?家族に一切連絡することなく警察沙汰になってた記憶があるけど、映画のほうは携帯で旦那にベニスにいるよ、明日帰る、と連絡し、結果的には帰ら(れ)なかったので旦那が素人探偵を送り・・・探偵役(Giuseppe Battiston)も隣人役(Marina Massironi)も皆さん良いです。で、毎度のことながらモヤモヤ感で終わるTylerの小説と違ってPane e Tulipaniは楽しい結末。途中も終わりもずっと楽しい映画。

Bruno Ganzは1941年にチューリッヒで生まれて2019年にチューリッヒ州のWädenswilでお亡くなりになりーーーこれからは、その人がコロナ禍を経たかどうか、何歳の頃に遭遇したかなどを、何歳の時に第二次世界大戦が始まったかなどと同様に気にするようになるのかな。俳優としての出だしはベルリンに渡ってのドイツ演劇界での活躍。その後ヴェンダースの「アメリカの友人」、「ベルリン天使の詩」。その後、実に多数の国の多彩な監督、クセの強い監督とも仕事をしてます。スイスドイツ語、ドイツ語、フランス語、イタリア語を流暢に話し(Angelopoulos監督のではギリシャ語も話している?)、チューリッヒ、ベニス、ベルリンの3か所に住まいがあったそうなので、この「ベニスで恋して」は自宅から撮影に通ったんでしょうね。

You Tubeで「総統閣下はお怒りです」のパロディ動画が熱い「Der Untergang ヒトラー最後の12日間 (2004年)」では鬼気迫るヒトラーに成りきっている一方、2016年の「Un Juif pour l’exemple ユダヤ人を見せしめに」ではユダヤ人であるゆえに殺されてしまう側に扮しています。大ヒットは絶対に見込めない、第二次世界大戦中のスイスの黒歴史を扱った問題作や小作品の小さい役にも、スイスで最も有名な俳優であるにもかかわらず出演しています。「Vitus 僕のピアノコンチェルト」(2005年)やハイジ(2015年)での子供を見守るお爺さん役もありましたが、最晩年の出演はSally Potter(2017年)やLars von Trier(2018年)監督を含む過激な作品でした。その先を観てみたかったですが、映画作品は残ります。

Pane e Tulipaniの作品データベース

https://www.imdb.com/title/tt0237539/

コメント

  1. 合言葉は同じ誕生日♫ より:

    ベニスで恋して、まだ見ていなかったので、見られる機会を見つけ次第見てみます

    • panorama-alpin より:

      ツタヤでレンタルかしら?昨日テレビで「千と千尋の神隠し」を見ました。すごく変だけど圧倒的な映画でした。20年前に見た切りすっかり内容を忘れてました。

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