前々回で例に出したベルン州のBiel / Bienne出身でフランス語圏で生まれ育ったイタリアからの移民2世の友人がVaud州のLausanne(ローザンヌ)に引っ越して感じたのは、Lausanneの人々のドイツ語&スイスドイツ語への強い憎しみだったそうです。
彼女は彼女の周囲で話されているスイスドイツ語はほとんど分からないものの(本人談)、それでも憎しみにはならなかった。さてVaud州ではフランス語のみで快適に過ごせますがスイス全体でいうとフランス語は少数派(3割)でドイツ語、特に難敵のスイスドイツ語ができないと全国レベルでは不自由なこともあり、フランス語圏の雄を自認するLausanneとしてはその葛藤があるかしら。
フランス語圏の別の都市、ジュネーブになると「国際都市」でスイスドイツ語などどうでもよくなってるので、その引け目はない感じですが。
ではフランス語圏の人はどうしてスイスドイツ語を学ばないのか?というと、会話(専用)言葉の習得は難しい!のです。津軽弁やウチナーグチで地元の人と対等に話せるようになるにはどうすればいいのか?外から引っ越してきて地元育ち同士が真正の茨城弁で話す内容を聞き取れるようになる日が来るのか?
スイスドイツ語を扱う語学スクールも存在します。しかし、語学の習得はいかに多く話す機会があるかにかかってます。私的な会話で使われるスイスドイツ語で話してもらうためには親しい関係になる必要があり、親しい関係になるためにはスイスドイツ語を話す必要があり・・・もちろん英語やフランス語でも親しい関係になれますが。
またスイスドイツ語といっても地域ごとにバリエーションがあるらしく、ここがまた部外者フランス語圏の者に二の足を踏ませる要因です。前述のBiel/Bienne出身のフランス語話者はどうやってスイスドイツ語が半分を占める市内でドイツ語を使わずに育ったかというと、買い物やレストランでのやり取りならば「買いたい・売りたい」の関係なのでつっ込んだ会話をせずにも互いになんとなく理解できてしまうものなのです。
全スイスを回るKNIEサーカスで演目間のつなぎ(重要)は独仏の語圏で異なるアーティストを使うことも多いですか、今年は歌手Bastian Baker一人。彼はフランス語圏育ちだけどスイスドイツ語を話します。そうなると両言語のメディアやイベントに呼ばれるチャンスが増え(サーカスもその例)それって軽視できない特技ですよね。
まあBastian Bakerの場合は歌うのは英語。以前、歌詞を知っている人がとても少ない現スイス国歌に替えて、新しいのを作ろうというコメディでBakerに扮してギターを手に登場した役者に対し、あんたは英語でしか歌ってないじゃん、とツッコミを入れられていた。
Bastian Bakerは1991年生まれ。この世代だと、セールスを考えたら英語で歌うわな。