2019年12月15日はスイスの鉄道にとって歴史的な日、Lémain Express(レマン・エクスプレス)が営業を開始した日でした。Lémain Express(以下LEX)はスイスとフランスの2国間にまたがる鉄道網の総称でヨーロッパ大陸最大規模。ジュネーブを中心に国境をまたいで6本の路線、総延長230㎞、45の駅が一枚の切符でつながるというものです。
たったそれだけ?複数の国をつないで走る路線なんてもっと長いのがいくらでもあるじゃない、と思うでしょうが、オリエント急行などは複数の国をつないでますが「線」です。LEXは「網」であり、圏内6本の路線の複数の駅から分岐した路線同士やそこから延びる路線への乗り換え・接続を前提としており、さらには駅からバスやトラムへもつながっています。街中、町間を走り駅間隔は短く本数も多いです。目的はズバリ、自家用車から公共交通機関への利用を促進することです。
というのは、現在のスイス国内の人口が800万人余り、そこへ毎日35万人がスイス国外から国境を越えて働きに来ています(シェンゲン条約加盟により周辺国との国境検問は廃止)。ジュネーブは三方をフランスに囲まれ、フランス内に突き出た半島のような地理的位置ですが、全越境労働人口35万人のうち実に12万人がジュネーブとその隣のVaud州、いわゆるLéman(レマン)湖の北側のスイス領にフランスから働きに来ています。
都市部を一歩離れるとフランス側の公共交通機関は非常に限られることから、毎日多数がフランスから車で通勤して毎日の大渋滞。ジュネーブ駅を利用した方は、「フランスに向かう列車のホーム」が隣接してあるのを見たかもしれませんが、あれはTGVといった長距離列車用で、大多数の通勤者には関係ないのです。
レマン湖周辺のフランス側とジュネーブを結ぶ列車の構想は大昔からありました。スイスの連邦政府とジュネーブ、フランスの間で鉄道建設に関する協定が結ばれたのが1912年!すごい昔だ。工事が着工したのが2011年なので構想100年以上、工期も9年近くに及び、世紀の鉄道プロジェクトの一つと呼ばれる所以です。
そうそうフランスからスイス側レマン湖(この湖の名前ですが、Vaud州ではレマン湖ですが、ジュネーブではジュネーブ湖と呼ぶ)沿岸に働きに来る人数が12万人と書きましたが、フランスに住んでる人がスイス領内の職場に来るということで、フランスに住んでいる人の中にはフランス人だけでなく、スイス国籍を持っているがスイスの物価高から逃れてフランスに住居がある人やフランスに住む他のあらゆる国籍の人をも含みます。なんといってもスイスのお役所や学校では外国籍であっても能力さえあれば雇ってくれますので。
ジュネーブ州のサイトから、レマン・エクスプレスの説明トップページ。自家用車に替えて公共交通機関の使用の勧め:https://www.ge.ch/dossier/leman-express-repensez-vos-deplacements
路線図と乗り換え駅の解説:https://www.ge.ch/dossier/leman-express-repensez-vos-deplacements/reseau-leman-express
連邦政府の公式サイトから、国境を越えてスイスに働きに来る人の人数