「チューリッヒ」はどこにある?

今回も写真は前回お話ししましたSechselatenの時のです。

前回「チューリッヒ」と書くのに少し躊躇しました。何故かというと、スイスでは「チューリッヒ」とは滅多に聞かないからです。

これはゲスト参加のバーゼルの人たち。

えっチューリッヒって言わないの?でもガイドブックにはそう書いてあるわよ???

ハサミなど刃物のギルド、職人組合

スイスでは4つの言語が話されていて、同じ地名でもそれぞれの綴り、それぞれの発音が使われています。

”チューリッヒ”の綴りはZürich (独)、Zurich(仏)Zurigo(伊)、Turitg(ロマンシュ)。(これだけバリエーションがあるのはZürichの存在が他の言語地域にも広く知られ、口にされているからで、大部分の地名は一言語でのみです)

発音はウィキペディアによるとそれぞれツュリ、ズュリック、ヅリーゴ、トゥリッチ・・・カタカナで表記するのは無理がありますが、それぞれかなり違いますね。

チューリッヒ(仮称)はドイツ語圏なので尊重してドイツ語圏出身でチューリッヒに住んでたこともあるスイス人に聞いてみました。

―ねえねえ日本じゃチューリッヒって言うんだけど、スイスじゃ滅多に聞かないよね。これってどこから来てんのかね?

-何?チューリッヒ、うん、それはhigh german式の発音だな。日本じゃ「良いドイツ語」で発音するんだね。

ドイツ語を習った方はお解りでしょうか。ドイツ語で「CH」の発音はその直前の母音がA, O, Uのときは「ク」の破裂音、いかにもドイツ語的な強くて息を吐きだすような喉の奥で響かせる「クッ」だが、直前がIやEの時は「ヒ」に変化します。しかしこれは「良いドイツ語」の場合であり、古いドイツ語が色濃く残るスイス地方のドイツ語では直前の母音がなんであろうといつでも「クッ!!!」と発音するんだそうです。あれ、じゃあZÜRICHはなんで「ツーリックッ」にならないの?

-うーん、CHが無音となる数少ない例外がZÜRICHかなあ。

ワイン醸造組合

―ということはイッヒ リーベ(私は愛する)のich(私)、スイスではどう発音するの?

―そうだね、チューリッヒ方言は イーのあとに喉の奥で「クッ」と破裂させて転がして響かせる「イークッ」。 ベルン方言はほぼ「イーク」、サンクトガレンは「イー」…あとアッペンツェル方言、これはものすごく特殊でね…(嬉々として羅列し始める)

沿道の人にワインを注いでくれている

使用頻度の高い単語ほど変異が大きいですよね。このような違いはありますが、ドイツ語圏スイス人同士は意思疎通ができます。そして即座に相手の出身地を判別します。あ、Gomsの言葉は彼らにとってもやはり相当曲者だそうです。

ウィキペディアでは「ツュリ」とあるZürichの発音も、同じスイスドイツ語での異なるわけで、当のZürich人は「ツーリ」と言ってます。私には「釣り」と聞こえる。

このスイスドイツ語方言は、外国語としてドイツ語を習わされるフランス語圏スイス人にとって呪わしい存在です。一生懸命学校で習っても隣の住民の言葉が聞き取れない!ドイツ語が母国語でもドイツ、特に北部ドイツ出身の人だと聞き取れるようになるまで苦節数年、自分でしゃべれるようになるまでさらに数年、とも聞きます。

私は関東の人間だけど関西弁は聞き取れる。でも住んでたこともある茨城の本格的な方言は出だしからして聞き取れない!そんな感じなのだろうか?

スイスのオフィシャルな言語は「良いドイツ語」です。ドイツ語圏のスイス人は老若男女を問わず、家ではドイツ語のスイス方言を話し、学校では「良いドイツ語」を習います。バイリンガルなんだそうです。発音以外でも、β(数学のベータのような文字)を使わずにssで済まします。近代ドイツ語に発展しなかった!

首からパンやクッキー、小瓶などを下げている人も多かった。そして行進しながら食べていた。

前回に引き続き、写真は2018年のSechseläten(6時に鐘を鳴らす、の意味)、地元の言葉ではSächsilüüteーのものです。

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