Via Sbrinzはスイスの真ん中あたりとイタリア北部の市場をつなぐ道。ここを通ってスイスから運ばれた品々の中に、Sbrinzという固~いチーズがあったことからこの名前が付いています。旅日記はひとまずここで休憩しますが、読んでくださった方々、本当にありがとうございました。2014年の時点ではイタリアのPonteより先の道標とハイキング道の整備状況が未知数でした。いつか、しっかり準備して続きを歩きたいなあと夢見ています。
ローマ帝国時代からのヨーロッパ文明の中心だったイタリアの諸都市。北ヨーロッパの人々がイタリアに行こうとした時に、ドーンと壁となって阻んだのが現在はスイスと呼ばれる地域の山々でした。知識人にとっても金儲けがしたい人にとっても、どんなにか邪魔っけな山塊だったことでしょう。あの山の向こうには太陽の国が待っているのに!人々の諸々の熱意によって開発されたのがより安全に、なるべく上り下りを避けて楽に歩ける山の隙間を通る道でした。
こうした旧実用の道から得られるのは、ロープウェーで高所に上ってのハイキングに比べたら、ずっと地味な景色かもしれません。壮大な眺めを得るための道ではないからです。日本の山岳信仰に起因する「高み」に至るための道とも違っています。だからこそ、山の間を延々歩き続けた末に小さな集落にたどり着いたら、小さな教会、小さな飾り一つが心にしみます。車で着いたら絶対に味わえない心持ちです。
Via Sbrinzだけでなく、多くの峠越えルートがスイスとイタリアの間にはあります。Via Sbrinzはそのうちの、どちらかというと本流ではなかったようですが、その歴史を語り継ぎたいと思う沿線の人たちの思いは強いです。サイト
http://www.sbrinz-route.ch/home.html
では当時の服装でロバの背に荷をのせて歩く様子の写真が見られます。毎年行われる催しのようです。
昔の峠越えスイス内通過ルートの幾つかは後には鉄道が通るようになりました。2016年に開通した鉄道が通る「新」Gothard(ゴッタルド)トンネルは青函トンネルよりわずか(!)に長く、レーティッシュ鉄道もまたスイスを通ってイタリアに抜けています。いずれも、沿線を歩くハイキング道がばっちり整備されてます。
読んでくださった方の中から、よし私も、と歩いてみられる方が出れば筆者としては嬉しいですし、いつか、と思ってくださるだけでも嬉しいです。スイスでは一人でも問題なく歩けるところがほとんどですので、是非他のコースでも、絶景の所もそれほどでもない所も、機会があったらちょっとだけでも歩いてみてください。
日常生活から離れて一日に5~6時間黙々と歩き続けると人間かなり変わります。スイスが遠いなら、日本でも一人で歩ける道が増えればいいなと思っています。
この連載のお陰で、Gomsの家ってどうしてあんななのだろう、と疑問には思ってたけど放っておいたことを調べはじめ、GomsからWalserを知りました。いつか、Walserwegというのを歩いてみたいです。Via Sbrinzが計110㎞だったのに対し、これは300㎞。Gomsからグラウビュンデン州に渡った彼らのあとをたどる道です。グラウビュンデンと言えばGomsの木の家と並んで印象深い、こちらは石の壁の漆喰に描かれた絵の家ですね。いつか歩いたらご報告しますね。
次回からは、Via Sbrinz及び他の道を歩く上で、知ってると便利かもしれない情報、これだけは書いておきたい!私の超個人的視点によるスイス点描、日帰りで歩ける短いコースや街歩きをちょこっと書きます。
そして、目標7月くらいからはVia Albula/Berninaを始める予定です。グラウビュンデン州のレーティッシュ鉄道を見ながら沿線を歩くハイキング道です。また読んでくだされば、時々覗いてくださればとても嬉しいです。
https://www.schweizmobil.ch/en/hiking-in-switzerland/routes/route-033.html
もう一件、私が紹介しているのは「歩く」道ですが、自転車道もあります。こちらの方がむしろ早く整備されたそうです。興味のある方はこちらからどうぞ。
https://www.schweizmobil.ch/en/summer.html