それはスイスで働き始めてから数か月ほど経った頃のこと。ガイドブックを持っていなかった私は、何となく耳にしたことのあったスイスの観光地名、まずルガーノに、次にルツェルンにそれぞれ三日間の日程で行きました。今思うとルガーノは当時住んでいたジュネーブからよりによって最も遠い街の一つでした。
ホステルに泊まり、そこの受付で集めた観光案内パンフレットで知った、3日間鉄道、バス、ロープウェイ、ケーブルカーが乗り放題の切符を買いました。ルガーノ沿岸にはマッジョーレ湖があり、湖は山々に取り囲まれています。そしてそれらの山のピークを登っていく登山鉄道、ケーブルカーやロープウェイが多数、本当にたくさんあります。
この切符を手に入れた途端、私の中の「すべての山に登れ」スイッチが入りました。列車とバスの時刻表もあったので、頭をひねって「なるべく全部の山に登る」緻密な駆け足スケジュールが組まれました。実際、てっぺんからの眺めは素晴らしかったです。有数の観光地の名に恥じないそれはそれはステキな眺め。ところが、三つ目、四つ目の山の展望台に上ったころ、とってもきれいなんだけど、なんか飽きてきました。綺麗な景色は飽きる?湖と山、短期間に多量に眺め過ぎたのかも。皆がそうというわけではないでしょうが、私はそうでした。
自分の足で苦労して登れば、到達できるピークは一日に一つくらいでしょうが・・・自分の足で歩きたいな、との思いが湧いてきました。
もう一つ、このルガーノでの旅で印象に残ったことがありました。
知らない路線(しかもローカル線の風情のある古い車両の路線)にドキドキしながら乗り込み、静かな無人駅で降りたら駅前にバスがちゃんと待っていた。バスは時間通りに来て、バスとバスの乗換もバッチリだった。それはアジアの南国のバス路線に慣れた身には新鮮な驚きでした。鉄道とバスが時間通りに来て、乗り換えがスムーズ!