Via Sbrinz (1)Sbrinzチーズを運んだ道を歩く

スイスの地図に右上から左下に対角線を引きます。南半分は険しい山が連なりますが、北半分は比較的平地が広がっています。

中央東寄りの平野、Luzern(ルツェルン)近辺で作られるチーズにSbrinz(スプリンツ)があります。なんでもこのチーズはイタリアで珍重され、遅くとも1500年代には、スイスからイタリアへの主要な輸出品となっていたのだそうです。チーズはまず船で湖を渡り、次にロバの背に積みかえられて延々山々の間を縫って北イタリアのDomodossola(ドモドッソラ)の市場まで運ばれました。

中央スイスと北イタリアを最短距離で結ぶ道はローマ時代には既に存在していました。けれど流通量が増えるに従って、狭くて険しい山道は、やがてラバの隊列が通れるような、よりしっかりした道になりました。

商人だけではありません。職人、巡礼者、密輸業者までもがこの道を通り、周辺の村々に影響を与えていきました。険しい山々の中ではあっても、より安全で、より天候の影響を受けなくて、なるべく体力を使わないで済むようなルートが開発されました。

しかしながらこのルートは1885年にスイスの山塊を貫くゴッタルドトンネル(Via Sbrinzのちょっと東)が開通すると、物資の輸送路としての役割を終えました。

近年は観光目的で整備が続けられてきています。運送経路は一つではないですが、湖畔の港町Stansstad(スタンススタッド)からGrimselpass、Griespassの各峠を経由してイタリアに至る110kmの道が歴史的トレイルとして整備されています。

歴史のある道を歩く利点は、公共交通機関が発達していなかった当時、徒歩や馬で通った人たちが泊まった手軽なホテルや食事処が今でも利用できることです。また一部区間を除けば、かつてのルートの近くを沿うように、鉄道やバス路線が走っています。山深い中を歩くのにもかかわらず、公共交通機関を利用したプランニングができ、一部区間でも自由に一人で歩けます。

長い歴史を経て形成された“道”をハイキング路として整備する“Via Storia”一覧。通商的に重要だった道なので現在でも交通アクセスは良い、Via Sbrinzは中央の40番黄色線。

観光と文化遺産継承のために「歴史的に重要な路」が州や国の枠組みを越えてハイキング路として整備されました。Via Sbrinzでは、当時の服装でラバの背に荷物を載せて歩き通したり、一般観光客を対象に数日間にわたるガイドツアーが行われるなど、周辺住民の祖先が築いた道への誇りが特に強く感じられます。

峠の向こうの世界に出た時の達成感は何よりです。経路通りに北から南に歩き通さなければならないわけでもありません。実際私は細切れに、バスの時間の都合でしばしば逆向きに歩きました。

http://www.wanderland.ch/en/routes/route-040.html

http://www.sbrinz-route.ch/home.html ドイツ語のみ。パソコンの自動翻訳設定で英語訳にすると、それなりに自然な翻訳になります。

http://www.kulturwege-schweiz.ch/en/via-routes/viasbrinz.html

これも英語版は内容が乏しいです。右上の言語選択欄でドイツ語にすると情報量が増えます。

冒頭のVia Sbrinz概略図、出典:

http://www.sbrinz-route.ch/home.html

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