青空議会などと訳されているLandsgemeinde(ランヅゲマインデ)とは、有権者が一堂に会して話し合いをして決を取る集会のことです。無記名投票ではなく、挙手による意思表示です。よく「直接民主制」の例として挙げられますが、その実態は?
州の予算や法令などについて出席者なら誰でも発言できて、話し合って決める年に一回の集会、現在も続けているのはスイスでも二州、Appenzell Innerrhoden(二つあるアッペンツェル州の内側の方)とGlarus (グラールス)のみです。5月の第一日曜日、6日に行われたGlarusでのLandsgemeinde(地元の言葉ではLandsgmeindとeが二つ取れている)に行ってきました。まず、これは以前お伝えしましたZurichのSechselatenと違って「観光用の見世物」ではありません。現に、Glarusの観光案内サイトには載ってない、と思う。
朝9時前後から、州政府関係者と州議会の議員と州判事、それにゲストとして毎年一人呼ばれる7人いる連邦政府の閣僚の一人が、まずバラバラとKantonal Verwaltung(州の行政庁舎)へ入場します。全員揃ったところで、鼓笛隊(ファンファーレ)と兵隊さんの先導の元、そろってすぐそこのLandsgemeinde会場まで歩いていきます。馬が出てくるわけでも無し、ただそれだけです。関係者の両側を一緒に歩く、守衛さんは昔ながらの格好なので、彼らだけちょっと派手ですが、本当にそれだけです。
Landsgemeindeの開会にあたっての最初の挨拶や注意事項などは「標準ドイツ語」ですが、以降の発言の応酬は地元民による、地元民のための、ですので当然の「スイスドイツ語、Glarus訛り」です。屋外での開催で雨の日風の日、5月初めの寒さ暑さにさらされます。5月の第一日曜日、この日が荒天とわかってるときは二週目に延期されますが、二週目にはどんな天候でも決行です!傘をさすことはできますが、決を採る時は傘は畳みます。前方には椅子席(背もたれなしのベンチ!)がありますが、これは年配者優先、他はずっと立ったままです。天気が悪いと早く終わらせたいので発言者は短くしゃべる、とは言いますが。2018年はとても良い天気で、10時くらいから始めて14時ちょっと前までと異例なほど長くかかりました。その間、暑いくらいの陽気の中、ビックリするほど多くの人が黙って真剣に聞いていました。途中の入退場は自由です。スイス人って電車の中とかレストランの中とか、かなりうるさい人たちなんですよ。そんな彼らがずっと真面目に聞いていた。別に私語禁止ではないし、隣と話し合うことはあったと思いますが、関係ない無駄話はほとんどしてなかったと思います(雰囲気から)。
よく考えてみたら、義務ではないのに天気の良い日曜日を一日費やして参加している人達で、関心が無いのなら帰ればいい。
上の写真はお偉方を見送った後に、一般人もその後をついて移動しているところ。
これは問題点の一つでもあるのですが(後述)全有権者に比してLandsgemeindeの参加人数は多くは無いです。多い方だった今年でも5000人くらい?意欲のある人しか来ないので皆真剣に聞いている、というのも事実でした。
次回以降、
- 決の採り方
- どんなことが議題となるのか、どのように話し合うのか
- 問題点
- Landsgemeindeの日の特別メニュー
を書きます。
こちらがGlarusのLandsgemeindeのサイト。過去の議題はアーカイブになっています。ちなみに当日はGlarus内の公共交通機関は無料!有権者以外の見学者、観光客も無料!
http://www.landsgemeinde.gl.ch/
こちらはアッペンツェルのLandsgemeinde。Glarusの人によると、アッペンツェルの方はもうちょっと儀礼的で大体のことが可決されるそうです。4月の最終週開催
https://www.ai.ch/politik/landsgemeinde