村や町を通る際、時折「Four banal」と書かれた小さな建物に出会うことがあります。表題ではFour banalを「共用パン焼き窯」と書きましたが、Banalとは封建時代に遡る名称です。当時、住民が個人で、自分の家でパンを焼くのは禁止されていました。パン焼き窯は住民が領主から賜ったものであり、その使用は領主に許可されたものでありました。
一つには、家々が密集した集落で火事が起こるのを防ぐためであり、パン職人や専門職人しか使えなかった地域も多かったそうです。また領主の権限を示すものであり、住民は使用に当たって領主にBanを支払い、ここからFour banalと呼ばれるようになりました。
パン焼き窯の他にはpressoir(葡萄酒製造のためにブドウを絞る機器)、 moulin(粉ひき用の水車)なども、領主が管理する特権でもあり、またその設置や保守は住民の生活のため、領主に課された義務でもありました。
フランスではフランス革命以降この制度は廃止され、スイスでもおそらく徐々に個人で自由にパンが焼けるようになったのでしょうが、Valais(ヴァレー)州の特に山間の村落では今でもFour banalが現役で、自治体や地域の古参住民によって定期的にパン焼き会が行われています。
実際、思い返すとValaisを歩くとそれなりの確率でFour banalに遭遇します。Valais以外でも、何回か前に写真を載せたVaud州のMoiryなどでも残っていますがValaisで目立ちます。
祭りやパン焼き会の際には参加者それぞれが自分のパンを成形して釜に入れますが、焼きあがってどれが自分が成形したパンか分かるように、パンの表面に模様を彫ったりするそうで、なるほど。皆で食べ物をつくって食べるのは楽しいし、パンがこの地に暮らす人たちの基本だったのだと思わせます。
フランスでもスイスでもある程度の規模の町では独立したパン屋があったのでしょうが、小さな集落だと「共同パン窯」方式となったのかと思います。毎日焼きたてのパンが簡単に手に入るようになった今、少しでも古くて硬くなったパンは捨ててしまったり、余ったパンの再利用料理の記事が出るなど、昔を思えば嘆かわしい!わけですが。
しかし同時に以前は町内に何軒もあったパン屋が遠くの大型スーパーマーケットのパン屋に取って代わられた場所も多いです。大型スーパーでも焼きたてだし、種類は豊富で安定の味なのでこちらが好まれるのも無理はないですが、遠距離になる場合は車の無い年配者には大変だったりします。どこも同じか・・・
Valais州で現役のパン焼き窯の一部、各自自体のHPから活動時期のお知らせなど:
Val d’Anniviers
Saint-Bernard
Mieville
Verbier











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