今年の10月から日本でスイスの映画「ロール・ザ・ドラム」が公開されているのですね。この映画の舞台はヴァレー州のブドウ産地、ワイン醸造家で、撮影されたのはSaillonです。Saillon(サイヨン)は「ブドウ畑の中の道」を連載していた際に取り上げました。また映画についてもこちらで書いています。ロール・ザ・ドラム=太鼓を鳴らせ=原題のTambour battantで太鼓を鳴らすには、すなわち闘いの開始の合図の意味があります。
映画の中では1970年代の村人によるブラスバンド楽団が描かれています。以前は吹奏楽と合唱団は大概の町や村に一つはあり、合唱団は男女混声で教会での行事に花を添えていました。一方のブラスバンド(フランス語圏スイスではFanfare=ファンファールと言う)は映画にもあるように以前は男社会で、青少年が年配の男性と交流し、飲酒などの男としての通過儀礼を学ぶ場所としての役割もあったそうです。以前Hergiswilにあるスイスで最大なんだか現代までも残っているガラス器製作所で、歴史コーナーを見学した際、そこにも吹奏楽団があって「昼間はガラスを吹き(重労働)、夜は管楽器を吹く」とありました。
また映画ではイタリアからの労働者が描かれていましたが、当時は外国からの労働者は季節労働者、つまり一年を通してスイスに滞在することは出来ず、仕事を終えたら帰され、また家族を呼び寄せることは出来ず、労働力となる男のみが集団で暮らしていました。イタリア移民がスイスの鉄道や道路、建物の建設を始めとする貢献は多大で、またスイスにイタリアの料理等をもたらすことになりました。2021年にはローザンヌでイタリア移民150周年を記念した催しがあり、そのことについてはこちらで書いています。
「ロール・ザ・ドラム」の日本公開サイト:
https://culturallife.co.jp/roll-the-drum/