2017年のノーベル賞の発表から一か月たちました。今更の感もありますが、化学賞を共同受賞したJacques Dubochet(ジャック デュボシェ)名誉教授(75歳)の若い頃の経歴や受賞の知らせがあった時のインタビューが面白かったのでちょっと書きます。
名誉教授に就いているローザンヌ大学に掲載されていた、本人によるCurriculum Vitae(履歴書)の、特に若い頃の記述が面白い、とどこのメディアも取り上げてました。以下、本人による履歴、14歳までの部分を訳します:
1941年 楽天的な両親のもとに生まれる
1946年 もう暗闇が怖くない!コペルニクスのおかげで、太陽はまたいつでも出てくるってわかったから。
1948-55年 実験科学者としての最初のキャリアを積む(使用器具:ナイフ、針、紐、マッチ)
1955年 dyslexia (識字障害)と診断される。住んでるVaud州で公式に診断が出た第一号。このことにより、以降何やっても許されるようになったし、困難に直面している人のことを理解できるようになった。(以下略)
と、識字障害のせいで、学校時代はとても成績が悪かったそうです。識字障害は、知的能力には問題がないが読み書きに支障がある障害です。障害と診断され、理解のある校長等のお陰で学業を続けることが出来た、と語っています。そうじゃないと成績不良で普通は放校になってしまいますから。しかし障害と診断後も長い間苦労し、Federal maturity exam、いわゆる大学入学資格でもある高等課程の修了試験にパスしたのが1962年、既に21歳になっていました。
若い時分から政治に興味があり、実際活動もしており、現在は住んでいるMorgesの議会議員。左派社会党党員。
また現在はボランティアで難民に数学を教えている。
言動、服装ともにとてもフランクで受賞の知らせの有った日の会見では半袖シャツにサンダル履き。スイスでは普段ネクタイをしている人って日本に比べるととても少ないですが、この方は特にラフで有名のよう。
ー(インタビュア)授賞式のドレスコードって厳しいそうですよ、大丈夫ですか?
ー(名誉教授)私もそれが心配なんだよ。
ー(インタビュア)国の伝統衣装でもいいみたいですよ(お、川端康成!)Pays d’Enhaut(名誉教授の出身地・現住地であるVaud州の一部)の民族衣装なんてどうです?
などとつっこまれてましたが、伝統衣装(牛革の上着)は着るつもりないみたいです。それは自分の属している側じゃない政治団体のシンボルだから、だそうです。
最後に若者へのメッセージを問われ、「死んだ魚は流れに身を任せ、生きた魚は流れに逆らって泳ぐ。自分の行きたい道を見つけて、それに向かって沢山沢山努力しなさい、そうしたら何かになれるよ。根気と忍耐!」
受賞の知らせの当日のラジオインタビュー(RTS1)ポットキャスト 12分(フランス語)