スイスにおける死と葬式と墓(終)火葬が9割で自然に還るのも増加中

スイスの墓地について長々と書いてきましたが、もちろん、州や地域により相当違うし、土葬、火葬、自然葬など、人々の考え方もどんどん変わっています。

写真はフリブール州の山間の村Jaun(ヤウン)の墓地。木製の十字架&キリスト像がずらーっと並んでいます。住民の大部分がカトリックでスイスでも特徴的な墓地の一つらしいです。

Jaunの教会(2012年)

昨年亡くなった知人は、本人が生前から手配して公営の墓地ではなく、私的団体が運営する森の中の共同墓地に葬られました。公営墓地では棺桶なり骨壺なりに入っていることが必要ですが、そこの私営墓地では遺灰を土に埋めることができ、たやすく「土に還る、自然と一体になる、植物の栄養になる」のだそうで、スイス各地でどんどん増えてるそうです。(「思い出の森」に関する新聞記事

Jaunへの道(中央奥に集落が見える)(2012年)

スイスでの火葬の割合は、1983年に30%だったのが30年間で3倍に増加、2016年には90%以上。カトリックでは「少しずつ消滅する」ことが推奨されているので比率が少なめですが、プロテスタントが主流のNeuchatel州では、最初の火葬が行われたのが1909年で現在は驚異の97%!隣国のフランスではまだまだ30%と低いそうです。

Vufflens-le-Chateauの墓地と教会(左)

その辺りの事情はRTS(スイスのフランス語圏の放送局)の2本の記事を参考にしました。2016年2018年の記事で若干昔のものですがインタビュー動画もあります。老人ホームの住人に火葬と土葬とどちらがいいか聞き、火葬だとキリスト教的復活が不可能になるのでは?との問いに「私の人生はこの一回でお終いでいいです」と答えていたり、なんと神父でさえ「自分の体は科学のために献体して、森の栄養になるのもいい」と答えていたり・・・火葬が劇的に増えて墓地に空きスペースが増えたというのはスイスの多くの墓地での共通認識ですね。この100年間で土葬がデフォルトだったのが、火葬、遺灰を自然の中に埋めちゃう、のが珍しくなくなりました。何よりも、選択肢が増えたのはすごいです。

左側に専有面積の広い「土葬」区。右側には一区画当たりが小さいTombes à la ligne区画

お墓の規則は自治体や州によって異なりますが、Lausanne市の場合、亡くなった(葬られる)順に一列に骨壺が葬られる「Tombes à la ligne」では場所代は無料!亡くなった(住んでいた)場所の自治体が費用を負担して場所を提供する義務があるそうですが、Lausanneの場合は使用期間は30年、延長更新不可。

順々に葬られる列形式(場所の事前予約不可)

一方、「Concession」は有料で、空いていれば場所が選べます。専有面積は大小あり、同一のお墓スペースには一人から複数人まで入ることができ、5年刻みで延長更新が可能、最長60年まで使用できます。

まだ使われていないが区切ってある区画。この墓地では芝生ではなく、小さな砂利が敷いてある形式

前々回のBois-de-Vaud墓地で見たように、Lausanneで亡くなったわけではないココ・シャネルやクーベルタン男爵などのお墓があることから分かるように、没後にスイスのお墓に「引っ越す」ことも不可能ではありません・・・非住民の場合は諸々の料金が割高になっていますが、Concessionの場合、広さにより住民が960~5700CHF、非住民は1380~8250CHFとなっています。

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