スイスを旅行した方々なら一度は目にしたに違いないスーパーMIGROS。オレンジ色のMマークが目印です。創業者Gottlieb Duttweilerの理念が「酒とタバコは売らない」でありました。しかし近年、観光客が多い地域では特例だか何だか、ちょっとした酒を売る店舗も出てきていました。事情を知らない海外観光客が酒類が手に入らなくて暴動を起こすことはないと思うんだけど。
去年、MIGROSが創業者(お亡くなりになって久しい)の命じた禁を破って酒類の販売を始める、と発表したときは、その次はタバコで、その先は大麻かね(現在スイスでは大麻の販売・栽培・使用は合法です)と邪推したもんです。
スイスにおいてCOOPと並んで二大複合商業形態である(近頃は多角化が激しい)MIGROSは他の商業チェーンの買収も盛んで、買収したディスカウント系スーパーの一つであるDennerでは酒とタバコは主力商品と言っていいくらい、問題なく販売。MIGROSが配布する料理誌では堂々と料理に合うワインのご提案(Dennerでお買い求めを!)。ああもう、酒を売る気満々なんだな、と思ったものだ。
ところが意外にも酒類販売の可否はMIGROSの協会員の評決にゆだねられたのだった。ちなみに私も会員です。MIGROSのポイントカードを作ったら自動的に会員になり、毎年の会計報告などに対して承認するかどうかの投票券が送られてきます。投票は郵送か店舗の投票箱へ。店舗で投票すると板チョコがもらえるのだ。
大一番、今年の投票締め切りは6月4日。そして6月16日、集計結果が出ました。意外にも、大差で否決。10の支部全てで否決。可決には3分の2以上の賛成票が必要なのに、過半数にも遠く及ばず。特に反対が多かったのはドイツ語圏スイスで反対票が80%!MIGROS側は酒売りたかったに違いないが、会社の希望方針に反して否決。1925年創業なのでもうすぐ100周年、だけどお祝いはノンアルコールビールでね、と(NONのラベルのノンアルコールビールを来年売り出す予定)。
色んな意見がありました。賛成側は 地域の産品(ワイン)を提供する機会が失われた 近所にMIGROSしか店がない地域だとアルコール入手に困る 時代によって変わっていってもいいんじゃない 等々。反対派の方と言えば、依存症とアルコール入手し易さの間には明確な関連がある。
スイス国籍を持ってないので国民投票とは関係ない私。珍しく投票の機会が得られた今回は、きっと販売されるようになるのだろうな、と思いながらも反対に一票入れました。私自身はアルコール大好きですが、一つくらいそういう店があってもいいんじゃない。否決されたのは意外だった。投票で変わることってあるんだな、と今静かに感慨にふけっております。今回は63万人、全協会員の実に29%が投票。例年に比べてとても高い投票率でした。そりゃそうだわな。
MIGROS 協会員に向けての公式発表
MIGROSの協会員のための、選挙についての心得記事:
MIGROSとは関係ないサイトによる、なぜこの投票が行われたかについての解説記事:
アルコール解禁否決を伝えるメディアの記事:
https://www.letemps.ch/economie/dix-cooperatives-migros-refusent-toutes-vente-dalcool
テレビ局RTSの解説記事。中に挟まれた映像はスイス外では観られない可能性大です。