COVID-19とスイス(5月19日)国境封鎖解除と観光客争奪戦

久々のちょっと遠出。EchallensからLausanneまで歩いた

2か月ほど前に封鎖された国境が少しずつ開き始めています。スイスと周辺の国々(ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア)との国境ではこの二か月余り、原則その国のパスポートか滞在許可証か労働に関する証明書を持つ人間しか受け入れませんでした。

すぐ向かいにはTemple de Montheronという修道院付きの教会、Auberge de l’Abbaye de Montheronという予約しないとは入れないレストランがあります。

5月16日からはスイスとドイツ、オーストリアとの間では互いに、家族、未婚であってもパートナー(どうやって証明するんだ?)への訪問、葬式・結婚式への出席が目的での入国が可能となりました。この家族の問題は深刻で、「離婚して別の国に住んでいる子供に会うのは可能か?」というラジオ番組での質問に対し、「子供、親がそれぞれどのパスポートを持っているかによる」というような回答をしていました。コロナ禍以前はシェンゲン条約加盟国内だったら国境も何もなかった:考えも悩みもしなかった問題が突然多くの家族に降りかかったのでした。

一枚前の写真の建物の壁には「Auberge de Montheron」。以前は宿屋だったらしい。ここ、周りはレストランと教会以外はほとんど何もないけど10分くらい先に普通の(予約しないでもOKの)レストランがある

6月15日にはドイツ・オーストリア・さらにはフランスとの間の(多分完全な)国境開放が予定されています。

麦の海

という発表があった先週末、突然イタリアがすべての国との国境を6月3日に開くと宣言。前述のドイツなどとの国境開放については両国間での電話会談の末決めたのですが、イタリアとは話し合いも何もなかったようで驚き、というかコロナ被害が少ないドイツ・オーストリアとの国境再開より先にイタリアとの国境を開く?特にイタリアに接し、被害が大きかったTicino州にしてみれば、ちょっと待ってくれ、です。

麦の穂が波のように風に揺れていた

何故イタリアは急いで国境を開けたいかというと、観光客を呼び戻したいからです。北ヨーロッパの人々にとって、とにかく太陽・海・食べ物、ついでに遺跡?で毎年最低2週間をイタリアで過ごすことに決めている人が大勢いるらしい。イタリアの経済にとって観光は重要な位置を占めています。スイスでは、観光に頼っている地域もありますが、国全体としては観光が主産業ではありません。国境を接していても、その辺りでズレが出てきます。イタリアが一方的に国境を開放する場合、イタリアはスイスパスポートを受け入れるが、スイスはイタリアパスポート保持者は受け入れないと思われますが、イタリアにとってはそれでも構わないわけです(スイス人あるいはスイスを通過してイタリアに行くドイツ人は自国に帰れる)。

このブログで連載している「Via Gottardo」はスイスがドイツとイタリアとの間に立ち塞がるようにあった山岳地帯で、北ヨーロッパとイタリアへ抜ける山の間の通り道を開拓する過程でスイスという集合体がつくられ拡張していった、という歴史話をハイキング道を絡めて書いています。ヨーロッパ内の都市間の移動、近年はEasy Jetなど格安航空会社が幅を利かせ、加速化させていましたが、飛行機の再開時期が不透明な今、国境が開いたら、イタリアへ向かう車でスイス内の陸上交通路はあふれることになるのか?そしてウィルスは?

スイスの主たる収入源は(観光業ではなく)金融と化学製品や機械の輸出であり、輸出相手国の1位がドイツ、2位がイタリアなんですよね(実はフランスよりイタリアに対する方が多い)。ということで国境封鎖緩和は純粋に相手国のコロナ感染状況の進展だけでなく、高度に外交的な駆け引きも絡んでくるんだろうと思います。どの国も経済的にボロボロになっていて、一刻も早く経済を何とかしたい、と思っているがここでウィルスに対する手を緩めてしまっては元も子もないし・・・

それにしても数週間でこうも状況が変わってしまうとは。ちょっと前までは「家に居ましょう!」だったのが、「レストランに行ってお金を使いましょう!」になったしな。そしていつの間にかスイスの各観光地による、スイス住民に対しての「今年は国内の観光地で過ごしましょう!」観光客争奪戦が始まりました・・・例えばAppenzellでは3泊以上で現地までの交通費支給・・・スイス人が国境を越えて遊びに行くかどうかはともかく、今年はアジアや産油国の富裕層でもスイスには早々来れないでしょうから。

あれ?先々週までは「人との接触・移動は避けましょう」だったのが、いつの間に国内とは言え、今でも距離確保は必須とはいえ旅行に行ける(もしくは推奨)ようになったの?

先週末は私も二か月ぶりにバスと電車に少~しだけ乗り(一応混んでなさそうな日曜朝早く)、そこから一日かけて家まで歩いて帰ってきました。ということで今日の写真はその時の。畑も森も初夏の美しさでした。途中、レストランが営業していてワイン一杯ひっかけてトイレ休憩ができたし(それができないとある程度以上の時間しか家から離れられない)良かった良かった。

コメント

  1. 合い言葉は同じ誕生日♫ より:

    自粛解除、そちらのほうが早いですね。来月は多分こちらも解除ですが、現在のテレワーク生活来月からどういうパターンになるのかもまだわからないのです。多分一斉出勤にはならないとは思うのですが

    • panorama-alpin より:

      こちらではテレワーク生活は当分続きます。店舗などは再開しましたが、基本的に2m以上の距離を保つかそれに代わる手段を設けなければ仕事をしてはいけないことになってます(守られているかどうかはともかく)。うちの旦那の会社ではテレワーク開始直後から少なくとも6月末までは在宅通達、近頃では人によっては(年寄りや希望者)最長10月くらいまで在宅かも、と言ってます。なぜかスイス事務所判断じゃなくてブリュッセルとかアメリカ本社が決めるって話もあります。まあ元々社員のそれなりの割合が週に何日かでもテレワークをしていた経験があるからですが。

    • panorama-alpin より:

      あ、3段階に渡る解除措置のうち、まだ2段階目で、6月8日から義務教育以外の学校、プールなどが解禁されます。このまま状況が悪化しなければ。

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