スイスとコロナウィルス(スイス時間3月20日夕方)国境封鎖とは

「国境封鎖」という言葉が先週初めから聞かれるようになりました。スイスという国は、周辺列強国の山岳辺境部分が集まったところ、でもあり、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアと国境を接しています。しかも、Via Gottardoの連載でも度々書いているように、スイスは北ヨーロッパからイタリアへ陸路で行く際には、ほぼ必ず通らなければならない「通り抜けの場所」であります。日本にいると国境ってほとんど気にならないですが、国境ってどんな感じ?今回の国境封鎖ってどういうこと?

これはスイス北端のShaffhausen州の北部で、紫の線が国境、国境線が複雑に曲がりくねっているところです。濃い紫色の細い線が国境線、薄紫に着色されているのがドイツ側の地です。国境がひかれる以前から人が暮らして交流しているので、国境をまたいで道は続いているんですね。ついでにいうと緑の線のハイキング路だって国境をまたいでいます。

上の地図の一部分を拡大しました。紫線の国境をまたいで道がありますね。実はドイツの飛び地Busingenもある。

スイスには様々な規模の国境をまたぐ道が無数にあります。シェンゲン条約はヨーロッパのほとんどの国が加盟する条約で、域内の人と物の自由な往来が保障されることになりました。スイスはEU非加盟ながらシェンゲン条約加盟なので、スイスと周辺国との国境はフリーパスとなりました(先週までは!)。シェンゲン条約以前は、ある程度の規模(交通量)の国境をまたぐ道には検問がありました。この地図に入っているShaffhausen州に住んでいる知人は、スイスに住んでスイスに通勤していますが、ご覧のように国境線が複雑なので最短距離を目指すとドイツを通り抜けて移動していました。小規模の検問所はしばしば住居を兼ねており、係員はそこに住んでいた(職住一緒)ことも多かったそうです。知人は顔見知りなので毎日の通過には顔パスで通ってたそうですが。小規模検問所は条約以降廃止されていましたが、先週より鉄条網が張られ、警官が配置されて通れないようになっており、知人はものすごい遠回りをする羽目になっているそうです。

何となくRiveからGのバスに乗って、何となく国境の手前で降りた。(ジュネーブ)

上の写真は中規模サイズの国境所かしら。ジュネーブ州のフランスとの国境。2014年の写真です。身分証を見せるよう言われることはほとんど無いですが、それでもちょっと緊張するところでしたね。スイスから物価の安い周辺国へは食料などの買い出しに行く人が多いですが、一応一日に持ち込める上限(バターとか肉とかの量)があるそうで、滅多に止められることはないそうですが、それでもそうした規則があったので、この手の国境を通るときはそれなりに緊張していました。

St-Bernardはスイス南西の峠であり国境にもなってます。ここからAosta(アオスタ)までいつか歩いていきたい。多分手前が国境検問所だった建物で右の二軒はイタリア側のホテルかな

この他に、もっと大きな検問所がジュネーブやバーゼル、ルガーノなどにありましたが、そこでもよっぽどのことがない限り止められることはなかったし、列車などが国境をまたいで通行していたのはLeman Expressの例で書いた通りです。

St-Bernard峠 イタリア側(2013年7月)この年は雪が多くて峠が開いたのが遅かった

しかしまずはイタリアとの国境が、先週からはドイツとの国境も封鎖されました。もう毎日どんどん新しい対策が取られるので確認するのが面倒になっていますが、フランスとオーストラリアとの国境もいつからだったか、お互いに封鎖しています。といってもそれぞれの国のパスポートや滞在許可証を持っていれば、その国へは入れます(帰れます)。

以前書いたVia Sbrinzチーズを運んだ道のGries峠。イタリアとスイスとの国境 ここは今でも検問ないよ

つまり今までフリーパスだった国境のうち、小規模なものは閉鎖、通れないようになり、少数の利用者の多い国境が有人になって検問を行い、自国民か自国に有益な人間以外は通さないようになったということです。

いつか書きたいVia Spluga。Splugen(スイス)からバスに乗ると終点Monte Splugaは峠を越えたイタリア側。これも国境検問なしてバスで国境を越える例(と思ってて、今確認したら終点のバス停はギリギリスイス側かしら?)左に写っている青いバスはユーロで払いました

またまたここが大きな問題ですが、スイスでの労働ビザを持つ人もまた国境を越えることができます。イタリアに住む人(イタリアのパスポートや滞在許可証を持つ人)7万人が毎日スイス(Ticino州が主)に働きに入り、帰っていきます。すでにスイス全土で多くの産業活動がストップしていますが、7万人のうち多くが医療や介護現場で働いているので国境の完全封鎖は不可能でした。というわけで北イタリアロンバルディアから・・・というわけでTicino(ティチーノ)州は今大変に深刻な事態になっています。

Monte Splugaから北のスイス側へ歩きました。Passo del Spluga、Spluga峠はバスでも降りれる

同様にドイツからも、フランスからも毎日多くが働きに入ってきます。検問が復活し渋滞を引き起こし、以前より遥かに長い時間をかけて通勤に来ています。そして彼らの働きにより医療現場は支えられているという状態。また物流輸送の車両も通過できます。

北ヨーロッパとイタリアをつなぐ輸送路にあるスイス。人口当たりの感染者数が最も多いのがイタリアと接する(結びつきがものすごく強い)ティチーノ州、次いでドイツとの国境、ドイツへの幹線鉄道も発着している、Via Gottardoも始まったバーゼルシュタット州、その次が私が住んでるフランスとは湖と陸路でつながってるヴォー州・・・

今まで国境を越えて直通運転していた列車も本数が減ったり国境手前で折り返すなどしています(国境越え列車内でのパスポートチェックが復活した可能性もありますが、なんといっても今列車などの公共交通機関を利用する人が激減してガラガラなんじゃないかな)。国内の列車の本数も同様に利用者激減なので相当減ります。書いててちょっと暗くなったのでもっと明るいハイキング途上に通過した国境の写真も載せました。早く以前のように歩けるようになるといいな。

Passo del Spluga

コメント

  1. 合言葉は同じ誕生日♫ より:

    サンベルナール峠からアオスタに行く際は私もお供したーい! 以前にバスで通ったとき、また来たい!と思いました。今日は気分だけでもイタリアン応援をということで、イタリアン輸入食材店に行ってきました

    • panorama-alpin より:

      はい、私もここ一週間はイタリアワイン飲んでました。しかしスペインワインも、フランスワインも、ドイツワインも、いやスイスワイン農家も応援しなけりゃならないようになってきました・・・ブドウ農家に人手は、お金は足りてるだろうか。実はスイス農家が例年海外からの人手に頼ってる季節労働者が今年は調達できなくて大変なことになるだろう、と今週くらいの記事で読みました。アオスタで生ハム食べたい!

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