スイスにおける宗教(中)無宗教が大勢に近づいている

青がカトリック、赤プロテスタント、黄色が無宗教。https://www.bfs.admin.ch/bfs/fr/home/statistiques/population/langues-religions/religions.html

1970年からのスイス全域(15歳以上の定住者)での宗教割合の推移グラフを見てみると、昔はプロテスタント(グラフ上では赤)とカトリック(青)が分け合い、若干プロテスタントが上回っていました。それが40年後の2017年には、カトリック36.5%、プロテスタント24.5%(昔の半分以下の比率!)。そして黄色で示された無宗教が25%、プロテスタントを抜いて2位の座。

ユダヤ教のシナゴーグ。2016年の一般公開日に見学しました(Lausanne)

戦後イタリア、フランス、ポルトガル、スペインといったヨーロッパ南部国からの移民によりカトリック人口が増えました。もっとも彼らもスイスに来て次の代になると教会に行かなくなる傾向があるんですが。今では最後のカトリック勢力ともいわれる中南米諸国からの移民が来てます。

シナゴーグ内

キリスト教といえばエチオピアから分離独立したエリトリア難民をスイスは大勢受け入れています。うちの近所に彼らの集まるところがあって、日曜日のお昼時には晴れ着を着た彼らでバスがいっぱいになります。

シナゴーグ内天井

1990年代のユーゴスラビア内戦でバルカン諸国から多くの人々が来て、イスラム教徒がぐっと増えました。またアフガニスタンやシリア、中近東からの難民移民も。そうはいっても5%ちょっと。女の人が頭にかぶっているベールなどで外見が目立つのでもっと増えている印象ですが統計上はそんなものか。

一つだけ赤(プロテスタント)が大きく上回ってるのがベルン州

さて、今日は社会科のお勉強のようですが、ええ、これはもう私の個人的なブログなのでグイグイ趣味に走ります、行きます。次は州ごとの宗教分布。上のグラフ同様、青がカトリック、赤プロテスタント、黄色が無宗教で、どれが優勢か、混ざると紫がかったり茶色になったり。

円が大きいほど人口が多く、その中での宗教分布

州といっても人口の大小様々なので、人口の多さを円の大きさで表し、さらに州内の宗教分布を現したのがこちら。ベルン州のみ例外的に円が大きいのに赤(プロテスタント)が多数派です。あとは州の人口が大きくなるにつれて無宗教が増えるとも言えなくもない。スイス中央にある「四つの州の湖」この南側にスイス原初三州があり、この三州は人口規模が小さく(だって山がち)、カトリックが優勢な傾向があります。

黄色が濃いほど「無宗教」と答えた人の割合が多い。少ないのは(灰色)中央のUriと右にあるAppenzellの内側州でどちらもカトリックが強い

さて無宗教。都市部で多い傾向はあります。なんとバーゼル(市)州では無宗教が半分に迫ってます。私は日本で自分の葬式をするとなったら仏教のお経の一つも唱えてもらうかもしれないですが、これは自分のためというより私の葬式をしてくれる遺族のためという感じかなあ(でもスイスで葬式となったら超簡素に済ませるだろうな)。普段は全く宗教について考えることない生活をしています。以前は「日本では無宗教と公言しても問題ないけど、海外でそう言うと過激派と思われるので取り合えず仏教徒でも書いとけ」と言われたのですが、いや、スイスの場合は無宗教が大勢になりつつある!特に大都市での増加が目立ちます。

赤が濃いほどプロテスタントの人の割合が多い(いずれも州単位)

ここまで来たらついでにプロテスタントの割合。ベルン州(大きいな)のみが50%超えてますが、あとはどこも半分以下なんですね。かつてはガリガリのプロテスタントと言われたあの州、この州が、ねえ。

青が濃いほどカトリックの人の割合が多い(いずれも州単位)

カトリックが優勢な州。左上端に濃くあるのが前回も書いたJura州(Ajoieホッケークラブ優勝おめでとう!)、左下がVallais州、左側に島のようにあるのがFribourg州。右端の小さな青い島がAppenzellの準州の一つ。これを取り囲むようにもう一つの準州は一つ前の図で分かるようにプロテスタントが優勢。スイス中央の「四つの州の湖」湖の北西にLucern、湖から南にUri、Ticinoと歩いているVia Gottardoですが、UriもTicinoもカトリック州です。

あ、そうそうローマ法王庁での兵隊さんは西暦1513年以来スイスからの派遣です。条件は19~30歳までのカトリック(まあそうか)男。

スイスの特色である「多様性」。言語においてはドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の分布は、飛び地もあるにはあるものの、それぞれの言葉を話す、周辺の国々からの流れなので言語境界線をはさんでまとまっています。それに比べて宗教(今回はカトリックとプロテスタントの二派について)は言語境界線を飛び越してモザイク状に分布しており真っ二つに東西に分かれている、というわけではありません。

図表の出典は連邦統計局の公式サイトから

https://www.bfs.admin.ch/bfs/fr/home/statistiques/population/langues-religions/religions.html

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