数百年前の建物や橋などの建造物が普通に現役で使われているスイスで、18や19世紀の建物自体はそれほど珍しくはないです。
ただ、この百年余りで社会が大きく変わりました。19世紀終わりまで大部分の人々が就いていたのは農業・林業・漁業ですが、現在これら第一次産業で働いているのは全就労者数のわずか4%以下!
ハイキングでは牛や羊がいる農業地帯を歩くことが多いので、既視感のある建物ですが今のスイスで家畜と関わっているのは圧倒的に少数派で、都市部に住んでいる場合こうした「昔の」建物を見たことがない、入ったことがない人も多いのではないでしょうか。
子供たちに祖先の暮らしぶりや昔の生活を教えたい、ちょっと体験させたいと思って来るのがBallenbergでもあります。
今でも相当人口の多い都市でさえも馬や羊や牛がすぐそばにいて、日本と比べるとびっくりするほど近い。一昔前の家ではもっともっと家畜と一緒かとても近い距離にありました。
一世代前まではヨーロッパのどこでもちょっと畑があるところだったら豚を自宅で飼っていて残り物は全部食べてくれるので便利だったわ~という話は聞きます。この豚小屋ですが、同じくらいの大きさでチーズ小屋ってのもあります。
一方今ではほとんど見られなくなった、特定の職業に特化した建物もあります。昔はどの村にも必ず一軒はあった鍛冶屋。馬や馬車に必要なもの、車輪を作ったり馬車そのものを作ったり直したり。集落と集落をつなぐ旧道沿いの町、馬車が通る町々には必須でした。そういえば「普通の」自転車屋も昔は小さな町にもあったけど今は大きな町の大型店に統括されてますね。
長い長い建物はロープ類製作所。
巨大工場で生活物資が大量生産され全国流通する以前、海外から安いのが輸入される前は村で何でも自給する必要がありましたし。
Ticino州の建物が集まってる区域です。実際に斜面に配置されてますので歩き回るにはそれなりの体力も必要とされますが車椅子でもアクセスできる地域もあります。
この集合住宅は現代のものと遜色なくかつ住民同士の交流もありそうで、あ、ここなら住みたいかも、と思いました。正面からの写真撮り忘れちゃったんですが。前回書いたように内部に調度品や衣類がある家も多かったです。
私の心に最も残ったのはTicino州のおそらく山合にあったであろう、ものすごく素朴というか清貧な住居の室内。小さなベットとテーブル、壁には宗教画、必要最小限のものしかない狭い室内の木の家でした。
農家にあった結婚祝いの布。書いてある文面は結婚生活への心得。
「邸宅」に分類されるような建物もあり、ここは博物館として伝統衣装が展示されていました。
Freilichtmuseum Ballenberg公式サイト(開館は4月中旬から11月初めまで): https://www.ballenberg.ch/en/
写真はBallenbergで2019年7月に撮影したもの