Avenches、ローマ帝国時代の名はAventicum

現在のAvenchesはローマ帝国の領域で、その時代Aventicumと呼ばれていました。紀元前509年頃から始まったといわれるローマ帝国は徐々に領土を広げ遅くとも紀元前15年には、Helvetii、Helvetiaと呼ばれたJuraとAlpesの山地に挟まれた領域はローマ帝国の一部となりました。

紀元前25年にはSt-Bernard（サンベルナール）峠、現在のスイスとイタリアの間の峠が開かれました。湖の近くに位置するAventicumはイタリアから北ヨーロッパへ至る交通の要所であり、西暦5~6年には最初のローマ帝国時代の建物が建てられHelvetiaの首都として最盛期には2万人が住んでいました。なおVindonissa (現在はAargau州のWindisch）には6000人のローマ兵を抱える駐屯地が西暦14~101年の間存在していました。

拡大地図を見てみましょう。建物が連続して密集しているのが旧市街（Vielle ville)の特徴です。旧市街はAvenchesの駅からは少し離れていますが、駅前からあるハイキング道のマーク（地図上では緑の線、現地には黄色の方向表示板や黄色の菱形マークがついている）をたどれば着きます。
街中には観光案内所があるのでそこでパンフレットをもらったら、今日は遺跡巡りに出かけてみましょう。
旧市街のすぐ横に、Amphithéâtre、円形競技場があります。最大収容人数は1万６千人。西暦130~165年に建てられました。ローマの競技場同様、グラディエーターと呼ばれる戦士と猛獣との戦いもあったそうです。現在でもコンサートが開かれます。写真はロックフェスのために椅子等を設置しているところ。夏の名物だった野外オペラ、雨にたたられて赤字が拡大したので二年に一度の開催に減りましたが2019年は行われます。
競技場観客席の間にある四角い赤い三角屋根の建物は、ずっと後の11世紀に建てられたローザンヌ司教の館ですが現在ではローマ時代の発掘物を収容する博物館になってます。
博物館に展示されてたローマ帝国時代の見取り図。左上に円形競技場、下端には半円の劇場。その間には今では柱？が残るTempleー神殿がありました。神殿は最大で5箇所あったそうです。今見られるのはTemple de la Granges des Dîmes, Sanctuaire du Cigognierの2か所。
Sanctuaire du Cigognier、Cigogneはコウノトリの意味で17世紀頃からここで巣を作ってたことからこの名になりました。ということはローマ時代の名前じゃないんですね。神殿跡からAurelius（アウレリウス）帝の黄金の胸像が発見されていて、皇帝崇拝の儀式が行われたと推測されます。神殿にはForum（フォーラム）、話し合いや討論が行われた場がありました。神殿のそばにはThéâtre、劇場があります。2世紀初めに建てられ、何回も改築しているので最初とは変わってるようですが、舞台も客席も馬蹄形の「ローマ形式」なんだそうです。
劇場はTrajan皇帝（98年からの在位）の肝いりで建てられたそうで、やはり皇帝をたたえる役割をも担ってたようです。

Théâtreから「風呂」を目指して歩きます。
ハイキング道の表示もありますが、Thermesは地図上緑の線で表されたハイキング道上にはないですが、表示パネルに従って歩きます。まあ、適当に歩いても大丈夫です。丘の上にある旧市街を振り返って眺めたところ。8月初旬の麦畑の中の道を歩く。雨降ってますね。畑の中に屋根出現。Thermes de Perruet。テルマエ・ロマエ、ローマの公衆浴場です。中には入れませんが、外から眺められます。

Aventicumは280年にライン川上流の住んでいたAlemann族に占領されます。現在のスイスドイツ語に近い言葉を話していた人たちです。フランス語で「ドイツ」の国を意味する”Allemagne”はここから来ているそうです。私はこのあたりで歩行を断念してますが、町は壁（Mur、Muraille)で囲まれていたのでその壁の跡と門ーPortes de l’Estなど他にも遺跡があります。またAvenchesから歩いて湖沿いまで出て、続けて中世の街並みが残るMorat／Murtenまで歩くハイキングコースもお勧めです。スイスのフランス語圏内でローマ帝国時代の遺構がある場所といえば他にMartigny、Nyon、そしてOrbeのモザイク床画は是非！