Courgenay　第一次世界大戦中の独仏国境は、ここからすぐそこだった

Porrentruyのすぐ隣、Courgenayという町の名は、中高年以上の年齢のスイス人、特にドイツ語圏スイス人には有名です。去年の秋にJura州のCourgenayから歩いた際、列車がCourgenayに近づくと、突然同行のスイス人が歌いだしました。1941年に公開された映画「Gilberte de Courgenay」でも歌われていた歌だそうです。 主人公GilberteはCourgenay駅前にある、両親が経営するホテル「Hôtel de la Gare de Courgenay」で働いていました。1914年から1918年にかけての第一次世界大戦中、スイスは中立国であり戦争には参加していませんでしたが、Juraの特にAjoie地方には多くのスイス兵が集結していました。何故に？第一次世界大戦で敵対したフランスとドイツの国境、今でこそバーゼルの北にスイスを含めた三国の国境点がありますが、開戦時の国境はそれよりも西、Jura州のCourgenayからわずか10㎞の所にあったのです。

上の地図上の色付けされたところが長年フランスとドイツ間で係争地となっていたアルザス＝ロレーヌ (フランス語：Alsace-Lorraine、ドイツ語: Elsaß-Lothringen エルザス＝ロートリンゲン、アレマン語: Elsäß-Lothringe エルゼス＝ロートリンゲ）があるところ。元々の住民はドイツでもフランスでもなく「アルザス人」であるとの意識が強かったようです。

アルザス＝ロレーヌは鉄鉱石と石炭の鉱山があり、さらには小麦とブドウを産する地です。上の地図で黄色の線が大戦開戦前の1871年から1918年までの独仏国境、黒線が現在の国境、そしてHaut-Rhinの南に、ちょこっと突き出てるのがJura州部分です。

アルザス＝ロレーヌは何としても獲得したい、となると独仏それぞれの軍隊が相手領内に攻め込むためにスイス領内に入り込む恐れは十分。こっちには入るな、と主張しても戦時に二国が第三国を戦場にした例など山ほどあります（今も）。スイスが戦場になることは阻止しなければならない、ということでスイスは中立国ではあるものの、それは大層な軍がJuraに集結し、国境線を守りました。なんたってSaignelégierのMarchés-concours が第一次世界大戦中の3年間だけは休止していたくらいですから。あ、軍馬も総動員されたそうですのでそれどころではなかったでしょう。

Gilberte de Courgenay、本名Gilberte Montavanはスイスドイツ語が堪能だったこともあり、フランス語しか話せないAjoie住民の中で重宝され、駐在していた軍の間で人気を博しました。当時、スイスのドイツ語圏からも多くの軍人がここに動員されていたので。記憶力に優れていて「全将校とさらには実に多くの兵士の顔と名前を憶えて名前で呼んだ」そうです。

映画で使われた主題歌は1915年に作曲家のHanns In der Gand がこの地の民謡を収集に来た際にGilberteに会い、Gilberteにちなんだ歌詞をつけることで兵隊さんたちの間で広く歌われたそうな。

さてホテルは往時の雰囲気を残したまま改装され、現在でもレストラン&ホテルとして現役です。コーヒー休憩を兼ねてレストランに立ち寄ったところ、「第一次世界大戦中のスイス軍」などの本が置いてあって私は初めてこうしたことを知りました。本物のGilberteの写真もあり、映画で演じた女優さんよりも本人のほうがきれいかも、と思ったくらい。

ホテルの隣くらいにある建物、冒頭の写真にあるGilberteの姿が壁に大きくある建物ですが、その横の壁にフランス語とドイツ語で解説が書かれています。Courgenayの駅には無料のトイレあり（2018年）。駅からSt-Ursanneへ歩きましたが、町内にはカフェとパン屋が何軒かありました。

ホテルのサイト

https://www.lapetitegilberte.ch/

Jura tourismeのサイト

https://www.juratourisme.ch/fr/decouvertes/villes-et-patrimoine/courgenay.1518.html#