スイス人と言ってもスイスに住んでいる人の相当の割合は三代前は他の国にいた、あるいは本人が他の国から来ている現状で、スイス人って何???ですが、とりあえずスイスで暮らす人たちの気質について。
前回、抗議する際も割と感情をぶちまけない傾向があると書きましたが、その理由として国土の小ささ、人口の少なさが関係していると私は感じます。市町村の規模が小さく、何から何まで狭い世界で、一度悪い評判が立ってしまうと職場を変えても知り合いの知り合いに会う確率が高そうです。
日本でも地方へ行くと村社会かもしれませんが、「東京へ、都会に出れば過去の自分を消して生きていける」望みがあります。スイスの場合、私が住んでいるローザンヌはフランス語圏で二番目に大きな市ですがそれでもたかだか30万人。郊外にちらばるスーパーはさておき、「繁華街」はほぼ一つですから知り合いに会うこと会うこと。名前は知らなくとも、いつも見かける顔という人もいますしね。都市人口が増え続けてますが、ちょっと地方に行くとホント集落か字か!みんな顔見知りというのが昔の普通の暮らしだったんだろうな、と思います。ルネッサンス文化が花開いたような、他のヨーロッパの国とは違う精神構造が形成されたんだろうなあ。スイスでは一部の都市を除いて今も田舎。そう大きな田舎じゃなかろうか。
スイスは強い自治権をもつ州同士が条約を結んで結びついた連邦国家です。強力な統一権力はありません。織田信長も豊臣秀吉も徳川一家も出ませんでした。しかも多言語、多宗教です。人口の上ではドイツ語を話す人口が6割以上と多数を占めますが、ドイツ語圏の州が他を圧倒することが無いようにの配慮が常になされて来ました。言語に限らず実際は州によって人口や経済力に差があるわけですが、少数派の存在が消されないように、多数派の側と少数派の両側から努力がされてきました。
また、EUに属さないけれどEUと敵対しない、EUに飲み込まれない、ものすごいバランス感覚で乗り切ってきました。どこか一つに偏らないように、との意識が常にあると思います。政治の世界でも今のところ極右政党も力を持っていなくて、むしろ閣僚を選ぶ際、過激発言で有名な人はそれ故に選ばれなかった、というようなこともありました。声が大きい人、極端な意見を公言している人は地方レベルの政治では選出されても、国レベルでは敬遠される傾向があると思います。
さて先月だったかな、Alain Berset(アラン・ベルセ)というスイスの政治家が日本を訪問して首脳会談もしたのかな?日本のニュースでほとんど取り上げられてなかったようなので知らない人も多いでしょう。この方は2018年の連邦大統領なので一応政治家の中では一番偉い人ということになるのでしょうか。でも名前知らないですよね。この人に限らず、スイスの連邦大統領で知っている名前ありますか?・・・一つにはスイスが小さな国だから、もう一つは2018年、と書いたように連邦大統領の任期は1年ポッキリ!元旦から大晦日まででおしまい!他の国の人は覚えませんよね。スイスの人だって、あ、今は○○か、てな感じかも。
さてスイスの政治、内閣閣僚は7人、アラン・ベルセもそのうちの一人で、この7人が一年交代で大統領を務めます。7人は選挙によって政党が獲得した議会の議席比率に大体近い比率で配分されてます。日本では内閣の構成員は単独か考え方の近い連立した党に賛同するメンバーのみからなるので、次々と政策が進んでいきますが、スイスの内閣閣僚は右から左まで、現在は4つの異なる政党の人間で構成されてます。右派から左派までそれぞれ2名・2名・2名・1名と呉越同舟どころじゃない!そんなんで政策は進むのか?だから何事もものすごく遅いです。ええ本当に。
そしてその7人は議員の選挙で選ばれるのですが、ドイツ語圏・フランス語圏・イタリア語圏、そして男と女、いずれかに偏らないようにの意志が強力に働いています。そんなこんなで「バランス」を非常に重視する国民性だと私は感じます。
参考:内閣閣僚の政党ごとの比率、Swissinfoより:
コメント
連邦大統領の訪日、まったく知らなかった‥。今はトランプと北の金さんに話題が偏ってますからねー
連邦大統領の日本での動静って知られてないですよね。ホンダ、明治神宮、築地などにも行って、相撲取りとも記念撮影したらしい。公式訪問とはいえ美味しすぎる。