Verbier Festival 2018 (ヴェルビエ音楽祭2018年)のプログラムが発表されました。25周年を祝ってのガラコンサート(7月25日)には、多数の有名音楽家が登場します。
今年から音楽監督がシャルル・デュトワからValery Gergiev(ヴァレリー・ゲルギエフ)に代わりました。この件についてひと悶着ありました。Verbier Festivalは単なる音楽祭ではなく、若者の育成にも力を入れており、ソリストと演奏するのは30以上の国から集まった若者で構成された特設オーケストラです。年間280ものコンサートで指揮しているGergievにこのオーケストラを育てる時間の余裕があるのか。Gergievがロシアのプーチン大統領と親密な関係にあり、また音楽祭の重要スポンサーであるNeva Fondation Timtchenkoもまたプーチン寄り、これってどうよ?との質問が音楽祭の責任者Martin Engstrom氏になされました。ま、当然Engstrom氏は大丈夫ですよ!と答えたわけですが。
出典:RTS 1ere 2017年12月11日 ”FORUM”
それはともかくとして、今年は去年はお出ましの無かったMartha Argerich アルゲリッチ様が二回演奏されます。7月23日に教会で行われるMischa Maiskyと仲間たちとの夕べ、ここではMaiskyとデュオでベートーベンのチェロソナタ第二番、トリオでメンデルスゾーンのピアノトリオ第一番。
もう一つは7月25日の25周年大ガラコンサート。こっちはものすごい人数の超有名人たちが出ます。会場はSalle des Combins、毎年建てては取り壊す仮設の大体育館のようなホールです。
さてここでVerbier Festivalについて少~しご説明しましょう。2018年は7月19日から8月5日まで。毎年スイスのValaisヴァレー州のVerbierで開催されます。Verbierは町の中心は標高1500m程度ですが、そこから多数あるゴンドラやリフトを駆使して良質な雪でのスキーを楽しめます、といっても私は冬には行ったことが無いのですが。観光シーズンは冬で、冬の間はセレブや王室も来る高級リゾート地なんだそうです。そんなわけでVerbierとの名を聞くだけで敬遠するスイス人も多いのですが、ここの音楽祭だけはスゴイ!と私は強く思う。
コンサートは会期中、仮設の体育館のような大ホールで夜に一回、教会で午前と夜の二回。クラシック界の大物が毎日演奏します。仮設の大ホールでは音響等は全く期待できませんが、それでも夕立が降ってきて雨が屋根をたたく音が響く中、それにも関わらず観客が皆引き込まれた演奏、ユースオーケストラが日々成長していくのを(だって超大物と毎日演奏していたら、ね)見まもる母親のような感覚、そういうのがあります。
それより何よりVerbier Fesitivalが他とは違うのは、昼間は若手演奏家のマスタークラスが無料で見学できることです。そして教わる側の演奏家のレベルと教える側のレベルが極めて高いのが特長です。生徒と言っても既にソロとして活躍している人、先生側では演奏活動から引退して間もないブレンデル、バーバラ・ボニー、ユーリ・バシュメットなども。教え方としては全くなってなかったけど存在が特異だった有名音楽家も印象に残ってます。一対一のレッスンの他にも、若手のカルテットが期間中を通じて曲を仕上げていく過程とか、普段は目にする機会のほとんどない、先生と生徒の高レベルの戦いの様子が見られます。これが予約不要(満席の場合は入れませんが)、入退場自由、無料で期間中Verbierのちょっとした人数が入れる場所で公開されてます。そういうわけで、有料コンサートには全く目もくれず、マスタークラス見学だけのために二週間滞在する人もいます。
またVerbierは高所リゾート地で下界とは距離があるちょっとした別世界で、有名演奏家がそこらを歩き回り、あなたの隣でコーヒーを飲んでいる、かもしれない。
ヴェルビエ音楽祭についてはまたいつか書きたいですが、注意事項としては
標高の高い所なので夏でもちょっと天気が悪くなると10度以下はざら。日差しは強いので晴れると暑い(日陰は涼しい)。山の天気は変わりやすい。
マスタークラスの会場、コンサートのある教会とホール、高低差のあるこれらの間を歩き回るためにはハイキング用の靴がお勧め。会場をつなぐ無料バスも走ってますが。
バスの時刻表と会場を示す地図を解読する能力。雨にも風にも日差しにも負けない根性と体力。
夜は寒くなります。そんなわけでコンサートでのドレスコードはありません。運動靴全然問題なし。全身ハイキング仕様普通。
Verbierは高級ホテルが主ですが、一軒だけ安ホテルがあり、実はホールにはここが近い。一週間単位で貸別荘や貸しアパートを借りて自炊することもできるでしょう。
COOPとMIGROSの二つのスーパーがあり、スイスでは例外的に日曜日でも営業している。
夜のコンサート終了後にMartignyまでのバス(要予約)も出てます。その日のうちにフランス語圏スイスの主要都市にたどり着ける列車に乗れる、との触れ込み(私は利用したことが無い)。
次回は再びクリスマスの話。イルミネーションの話。