山のコーヒー アルコール入り

今でこそカプチーノだのマキアートだの、洒落たイタリア風のコーヒーも飲まれているスイスですが、ちょっと地方の山岳地帯に入ると状況は一変します。

2017年現在、スイスのフランス語圏での座って飲む一番シンプルなコーヒーの値段は4 CHF弱、ドイツ語圏では少し高めで 4~5 CHFすると書きました。

これはドイツ語圏スイス、Braunwaldから少し行ったNussbüelにある、周りに何もないところに一軒ポツンとあるレストランの飲み物メニューです。

「Dessert」の次にある「Warme Getränke 温かい飲み物」を見てみましょう。

所謂普通のコーヒーがKafee crèmeです。crème=クリーム(仏)ですが、クリームは別に持ってきてくれるのでブラックでも飲めます。4CHF、妥当です。Milchkafeeーカフェオレ、熱した牛乳で割ったコーヒー。Ovomaltimeは昔懐かしの麦芽飲料ミロみたいなの。Schokoladeはチョコレート。それぞれ粉末の袋を温めた牛乳に付けて持ってきてくれます。(自分でかき混ぜて溶かせってこと)

そして、その下にあるKaffee Alpeträumli(アルプの夢コーヒー)7.5CHF、42vol.%って何?ちょっと高いんですけど!

そう、これが山岳地帯名物アルコール入りコーヒーなのです。スキー時には冷えた体を温め、糖分補給。%はアルコールの度数。メニューリストの最初に店オリジナルレシピのコーヒーを持ってくることが多いです。この店では「アルプの夢コーヒー」ですが、店の屋号や場所の名前を付けることもしばしばです。「大菩薩峠コーヒー」のように。

三番目のSchümli(ホイップした)  Pflümli (プラム酒)は定番レシピです。砂糖、プラム酒、濃いコーヒーの順に注ぎ、ホイップクリームをたっぷり盛ってから仕上げにココアパウダーを振りかけます。底に砂糖がジャリジャリ沈んでるのでスプーンでかき混ぜつつ飲むという…夏にはあまり見ないけど、冬には本当に飲んでます。検索すると写真沢山出てきます。見た目はちょっとしたパフェ。

Berggeischt、Kirsch(桜桃)、Zwetschgen(これまたプラム)、Kräuter(ハーブ), Grappa(ブドウ)とコーヒーに入ってる蒸留酒の名前です。都会のおしゃれなカフェではあまりお目にかかれない山のコーヒー。

参考までに、Tee(=Tea茶)Schwarztee(黒茶といえども紅茶のこと)、Pfefferminz ペパーミント ~ 以下ハーブ茶各種と続きます。頼むとおそらくカップにお湯+ティーバッグで持ってきます。原価を考えてはいけない…後ろに 37.5vol% などと書いてあったらアルコール入り。mit (=with) Rumラム酒、Glühwein (ホットワイン)。

Nussbüelの一軒レストラン すぐそばの牛さんの生乳使用

さて冒頭の写真のケーキGugelhopf。ここNussbüelは昔ながらのクグロフ型で焼いたこのケーキが有名なのだそうです。昔昔から変わらないレシピを誇っているので、日本の洗練され尽くした軽~いお菓子に慣れた舌には「普通の味」かもしれませんがスイスとはそういうところです。

さて、このケーキGugelhopf mit Nidel vom Hof (自家農場製クリーム付き)= frisch von den kühen (牛) im Nussbüel(すぐそこにいる牛さんの搾りたて)の”Nidel”はクリーム。普通のドイツ語ではSahne。全然違う。スイス方言ドイツ語は話し言葉「だけ」だなんてよく言われますが、書き物も相当違います。しかも言葉の常として、生活に密着した言葉ほど変化が大きい!Nidel は Glarus方言、 Nidle になるとBern方言。スイス方言ドイツ語は地方ごとの綴りの揺れが大きいです。しかも辞書に載ってなかったりする。NussbüelのNussは普通のドイツ語で木の実。büelはスイスドイツ語で丘。ドイツ語圏スイスは手ごわいです。

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