Blatten(ブラッテン)の悲劇

5月28日(水)の午後、スイス南部、Valais/Wallis(ヴァレー/ヴァリス)州に位置するBlatten im Lötschental(Blattenと言う地名は他にも複数あるため、Lötschen谷のBlattenと表記)上方の氷河が崩落し、それに伴い山の一部が崩れ、大量の岩石、土砂、氷で村の90%が埋まる惨事となりました。

Blatten(標高1540m)の南側にあるBirchgletscher(Birsch氷河)が崩れ、Kleines Nesthornの壁面が崩落し、Blatten中心部から上の地図の左側、Wilerの手前まで長さ2㎞、幅200mに渡って谷を覆いつくし、土砂は深い所では100mにも及んでいます。「村」と報道等では表現されていますが、4~5階建てのホテルが3軒。家々が斜面に密集して連なるスイスの山岳地でよく見られるスタイル。住民300人は9日前の5月19日から避難勧告を受け村を離れており無事。避難勧告から外れたWilerに近い場所に居た一人だけが巻き込まれて行方不明。避難指示から避難までは20分程度しか猶予時間が無かったという報道もあり、文字通り住民のほとんどは「一瞬にしてすべてを失った」。5月28日からの数日間は今まで見たことのないほどの報道規模でした。

町が形成されるような谷には道路、場合によっては鉄道が通っていますが、それに加えて必ずあるのが川!谷と川はセット!今回は大量の土砂により川がせき止められBlattenの隣に湖が出現。僅かに土砂から逃れた残り10%の家々もこれにより水没・・・そして進路をふさがれた川により、更に下流に土砂が流れ込むかも、と28日の晩はずっと下流のGampel町にも避難準備が指示されましたが、幸いにLonza川は堆積した土砂の上を流れ、最悪の事態は回避。GampelやStegってSBBの鉄道本線、ローヌ川沿いですよ。土砂がここまで来たらまた違ったレベルの災害だったでしょう。BlattenがあるLötschentalは、以前Kanderstegへ行く際の経路について書きました。Lötschberg(talが谷を意味するに対し、bergは山。だからLötschの山)トンネル、昔からある短い方と、新しい長い方の2本が掘られています。高い山に囲まれたBlattenには日本のナマハゲのような装束などの伝統的な独特な文化がありましたが今後はどうなるのか。

Blattenは3~4000m級の山脈に挟まれた、細い谷にあります。ある意味「どん詰まり」に思えますが、実はその先に通じています。Blattenの更に東にあるバスの終点Fafleralp。Blattenが通れなくなり、陸の孤島となったFafleralpの人達もまた31日にヘリコプターで避難を余儀なくされました。Jungfraujoch駅からKonkordiahutte(K)、Hollandiahutte(H)の山小屋をつなぎ、氷河を歩いて(ガイドツアー推奨)Fafleralpからバスで人里に帰るコースがありますが、Fafleralpが使えないとこれも難しくなりますね。

Blatten周辺はもちろん現在このようにハイキング道ブロックされてます。というよりアクセス不可。

実はValais州は4月下旬に大雪に見舞われ、特に南側は倒木だらけで多くのハイキング道が閉鎖されてます。森林管理作業での閉鎖の可能性もありますが、多くがStorm damageとかLandslideなどの理由になってます。

大雪くらいで何故に?と思われるでしょうが、温暖化で春が早く来て、早々に木々に葉が茂っている所に大雪が来ると、木が倒れるそうです。上の表示は6月1日時点での情報ですが、そういうわけで、Valais州は大変なことになっています。Blattenほどの規模ではなくても、Bagne地方などでも去年に続いての土砂崩れ・・・

Blattenの状況、動画等はスイス外では見られないことも多いですが、こちらで写真からでもその大変さが分かるかと思います。5月30日のRTSの記事:

https://www.rts.ch/info/regions/valais/2025/article/glacier-effondre-a-blatten-images-saisissantes-de-l-ampleur-des-degats-28898960.html

情報は6月3日執筆時のものです。

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