国別対抗歌合戦Eurovision(ユーロヴィジョン)Song Contest、2024年はNemoの歌うThe Codeが優勝しました。
NemoはスイスのBiel/Bienne出身でスイス代表として出場したので、来年のEurovisionはスイスでの開催となります。2023年にリバプールで行われた際には来訪者50万人、6000万ユーロの経済効果があったという話もあり、さっそく開催地に立候補した都市は数多くあるものの、屋内コンサート会場、空港からの交通機関、宿泊キャパ、レストランキャパが必要なので、大都市、おそらくチューリッヒかジュネーブが有力な模様。ということで、来年のこの時期にスイスの大都市に来る予定の方々、ホテル等の予約はお早めに!スイスのテレビラジオ放送協会SSG SSRは翌日にはタスクフォースチームを結成して準備にかかってます。あらゆるイベントの中でも最も威信がかかる超重大案件!普段のラジオ番組などは、放送事故レベルのうっかりミスもよくある、日本に比べるとかなり緩い組織だが。
さて本選、ファイナルでの歌手入場時に、Nemoはスイスの国旗を肩から背に、首からお腹の側には別の小さめの旗を広げていました。黄白紫黒の四色の横縞の旗、Non-binaryのシンボル旗。Non-binaryは日本語だとXジェンダーと表される、3番目の性ですが、必ずしも日本のXジェンダーとは一致しないのかも。男女のどちらにも属していない、その間である、あるいは男女の両方だと感じる人と定義されています。
2023年にNon-binaireであることを公表し、I broke the code(code: 規約、慣例、おきて を壊した)、良いとか悪いとか誰が決めるの?と歌ったNemo。Nemoの優勝でNon-binaryについても相当注目が集まっています。今のところスイスでは男・女以外の第3の性は認められていません。「男」は兵役の義務があり、兵役回避の場合は罰金を払いますが第3の性はどうするのか、とかそういう話にもなるし。一方で性的マイノリティの人達の自殺率の高さは問題だし、などの話をラジオでしてました↓
5月13日、RTSのニュース番組内での議論ポッドキャスト(仏語)
同番組内でも触れられていましたが、Eurovisionは単なる音楽のコンテストにとどまらず、音楽を超えた主張が展開する場でもあり、地政学の影響をまともに食らう場でもあります。イスラエルの参加に抗議するデモの一方、一般視聴者からの得票(ヨーロッパ以外からでも投票できる)が、抗議デモがなかったら得られなかったと思われるほど多かったのもイスラエルでした。その状況をどう思うかは別として、音楽面とは全然違う方向からの支持ですが、これがヨーロッパの深層。一方アゼルバイジャンとアルメリアの間で、民族楽器の笛を巡って討論の後に両者同じ笛を使う、というむしろ心温まる結末もあったらしい。
Eurovisionが性的マイノリティのミュージシャンの社会に対する闘いの場になっているという見方もあり、実際トルコは何年か前からEurovisionへの参加を辞めました。国を代表して出場が決まったミュージシャンへに対する批判を首相が擁護するとか、一方このご時世に、露出度の高いセクシー女性歌手が男性バックダンサーを従えて歌う、とか、かなり何でもありな番組です。
Eurovisionの公式HP:出場ミュージシャンの個別映像、予選、本選の全過程が見られます。またYoutubeの公式アカウントでも見られます。
ファイナル放送4時間!
いかにしてEurovisionが性的マイノリティの闘いの場になったか:
3年前に私が書いた当ブログの記事:Eurovisionという祭り
RTSのサイト内の記事いくつか: