国境を越えて鉄道やバスが通じている、同じ車両に乗ったままで隣国に入れるのは便利だが、2国間にまたがる公共交通路線では、遅れやキャンセルなどのトラブルが結構多い。鉄道には国ごとに「哲学」があり、お互いに完全には相いれないらしい。
国境越え時には緊張と、違う世界への期待からのドキドキ感が交じり合う。ちゃんと目的地まで行ってくれるかしら、と若干の不安と共に。
この夏はスイスの北西にあるNeuchâtel(ヌーシャテル)州のそのまた北西端、つまり国境に近い部分を歩き、ついでに国境を越えてフランスに行くことにした。普段なら、スイスのChaud-de-Fonds(ショー・ドゥ・フォン)からフランスのBesançon(ブザンソン)まで列車で1本だが、この夏は線路改修工事でバス振替になっていた。
バスが発車するはずのLe LocleはChaud-de-Fondsと共に時計産業で名高い国境の町。国境を越えたフランス側、Morteauなども時計産業で栄えた町で、国境をまたいで時計産業やかつての密輸行商の歴史をたどる自転車やサイクリングコースを整備しているくらいだ。
しかし、Le Locleで待てど暮らせどバスは来なかった。私だけでなく10人くらいの人が虚しく1時間近く待ちぼうけ。皆それぞれに、1時間遅れてきたことがあるとか、ミニバスが振替で来たとか言い出して、何となく1時間待ってしまった。ブザンソンにホテル予約しちゃってるのにどうしよう。
国境駅のLocleは無人。Chaud de Fondsに戻り、切符を購入した窓口に行くも係の人も私以上の情報は持ち合わせておらず。CFFのアプリにある時刻表にあるから確実と疑いもしなかったのだが、こいつが全くの大嘘だったのだ。
係の人はあちこちに電話をかけようとするも日曜日で誰も出ず。フランス内の駅は、そもそも線路を止めてバス振替にしてるので駅そのものが封鎖されていて無人。
結局予定していた11時台のバス便はなく、17時台の便で無事移動できたのだが、6時間遅れだよ!Besançon到着は20時近くだったけど夏なので明るくて助かった。またバス便は基本的には鉄道駅をつないで走るのだが、鉄道では通らない秘境的集落も通ってくれた。トラブルがなければ私はバス移動もかなり好きなんだよな。
現在、スイスの多くの駅は無人駅になっている。乗降客の多寡に関わらず、本当に駅員がいない!日本の感覚から言うと驚愕するほど。メカニックの部分に関わる駅員がいたとしても、「窓口」がある駅は冗談のように少ない。もう、全てアプリで調べてアプリで切符買ってください状態。しかし、そのアプリの情報が間違っていて、駅窓口の人も分からなかったら、どうしたらよいのだろう???
今回はスイス内を出発するも管轄はフランスのSNCF、そして振替バスを運行しているのはSNCFが委託したバス会社でしかも3社もあったらしい。真相は日曜日だったのでバスが大幅減便されていたにも関わらず、Web上では減便前の情報が残っていたから。
衝撃的だったのは、午前中から一緒にバスを待ち続けて窓口があるChaud de Fonds駅で一緒に係員に掛け合ったおば様。ようやくバスに乗ってから、やおらSNCFの駅でもらったという紙に印刷された時刻表を取り出して運転手に見せる。そこにはちゃんと正しい日曜日の時刻が記されていた。もっと早く出してくれ!ちなみに、バス振替に関するお知らせ貼り紙等はLe Locle駅には皆無。Chaud de Fonds駅にも少なくとも目立つところには貼ってなかった(ちょっと見た所では見当たらなかった)。
さて、あちこちに問い合わせるも埒が明かず、待ちくたびれた人々が口にしていたのが「フランスとスイス、同じ言語を話しているのにこんなにも分かり合えないなんて!連絡がつかないなんて!」
6月後半から7月前半にかけて、本当によく雨が降り、川の氾濫、土砂崩れが頻発して犠牲になる方々も出た。特にひどかったのがTicino州の、私も以前訪れたVal Bavona。元々過疎で観光で成り立っていた集落なので、今後が本当に心配。一時は橋が崩落して谷全体へのアクセスが寸断されていたほどだ。
あのひっそりとした谷をいつかまた歩きに行けるようになることを祈って、次回からはVal Bavonaからは大分離れているけどTicino紀行を始めます(10回くらいの予定)。