塩の横流しを防ぐために働き手を塀の中に留め置くという目的もありましたが、設計者のLedouxはユートピア思想の持ち主で、労働場所、住居、教会、劇場、パン屋、市場、温泉施設、病院を備えた完全空間を目指してもいました。
展示室の模型に見られるLedouxが設計した未完の設計の中には温泉施設と劇場を備え、文化的で健康な生活を送れば病院もいらない、という理想郷アンサンブルもありました。
製塩所の住居棟の後ろには住民が自由に耕せる畑がありました。現実には製塩作業は重労働で理想郷とはほど遠かった、という意見もありますが、製塩所の労働が他と比べて特に辛かった、彼らの平均寿命が特別に短かったわけではなかった、とも言われています。
2019年より製塩所の反対側にもう一つ半円を庭地化して、合わせて全円とする取り組みがあります。半円の直径の端に階段があり、反対側に渡れます。
数か月雨が降らなかった夏のせいで全てが枯れかけていましたが、2023年にも公園フェアがあります。
さてSaline Royale、中に泊まれます。元々の住居棟がホテルとして使われていて、宿泊中は中の見学自由。つまり、閉館後の見学客が去った後も居続けられ、庭部分などを散策できます。ホテルのチェックインは15~16時くらいからですが、それ以前でも入り口で申し出れば荷物を預かってもらえ、中を見学できます。閉館時間後は入り口の大扉は閉まりますが、宿泊者は横の扉から出入りができるので買い物や食事に出るのも可能です。製塩所として使われていた時と異なり、出入りはずっと自由ですね!
はるばる来たぜ!と私は2泊し、結論:蚊に悩まされました!暑かった2022年の8月。送風機はあるものの暑いので窓は開けっぱなし、、、すぐ裏は植え込みなので夜は蚊の襲来。「世界遺産だから」という理由で網戸は無し、電子蚊取の類は無いのかと受付に尋ねたところ、「苦手なお客様もいらっしゃるから」・・・対応する気ないですね。
一泊目は中のレストランで夕食を食べ(チェックインした時に予約した)、二泊目はSenansのRelais d’Arc-et-Senansまで歩いて夕食。次回はこちらのホテルレストランを選ぶけど、泊まってみないと分からないこともあるからなあ。得難い体験だとは思う。蚊の季節じゃなかったらなあ。次回は無さそうだけど。
さて、王立製塩所がつくられたのは、北側に隣接するフランスでも1、2の広さの広葉樹の森があったからです。現在でも森は健在。この森から伐った木を燃やして塩水の水を蒸発させたのですが、塩水は製塩所から直線距離で13㎞離れた塩鉱山からパイプラインで輸送されていました。
パイプライン敷設と合わせての大事業だったわけですが、僅か116年の操業期間でおしまい。そのパイプラインの経路がハイキングコースになっているので次回から歩きます。
写真と訪問は2022年8月下旬