Valaisのワインの特徴の一つは、ここでしか栽培されてない固有種(特産種)のブドウが多数あること!そしてワインのラベルにはブドウ品種の名が一番大きな字で書いてあることが多いです。ワインラベルで何を一番に押し出すか?醸造所の名前か、地名か、ブドウの品種か?家にあったワインを見た限り、Vaud州のワインは州内の地名を、Valais州ではブドウの品種を前面に出すのことが多い気がします。
スイスでのワインの3分の1を生産するValais州。Valais内ではPinot Noir(ピノ ノワール)26%、Chasselas(シャスラ)25%、Gamay(ガメィ)8%。このビックスリーでValais全体の栽培量の6割を占めます。
おっと、Chasselasは隣の州、VaudやGeneveなどではChasselasと呼んでいるのがValais州ではFendant(ファンダン)と呼ばれてます(白)。Chasselas自体スイス以外ではあまり栽培されていない品種ですかね。
Valaisで栽培されているブドウ品種ですが、3つに分類されます:
(1)autochtonesあるいはindigènesはValais発祥の固有品種で、Cornalin、Petite Arvine、Humagne blanche、Amigne、Rèzeなど。手入れが大変、収穫量に劣るなどの理由で絶滅の危機にあったのを1980年代に再発見され救われた品種。
(2)Traditionnels(伝統種)は、Valais以外の土地から持ち込まれて少なくとも100年は経ってる品種でSyrah(シラ)、Humagne Rouge(ユーマーニュ ルージュ)、Johannisberg(ヨアニスベルグ)、Païen(パイアン)、Ermitage(エルミタージュ)、Malvoisie(マルヴォアジー)、Muscat(ミュスカ)、Chardonnay(シャルドネ)など。昔からあったわけではないといっても、十何世紀頃に来たとかそのレベルで、遅くとも20世紀までには栽培が確認されてきた、Valaisの地に根付いて100年以上のもの。実は(1)の固有種と思われてきたものでも、近年の遺伝子解析からイタリアなどから峠を越えて持ち込まれた(2)に当たる品種かも、という研究結果もあります。
(3)Allogènes (近代種)は20世紀以降にValaisで栽培が始まった品種。Pinot Noir、Gamayは鉄道が開通する前夜の1850~1860年にフランスからスイスに根付いたようです。Valaisではないですが、スイス南部のTicino州で栽培が多いMerlotもこの時期にフランスから来ました。
ブドウ品種をラベルに大きく押し出した固有種のワイン、前回まで紹介した地場ワインショップなどに行く時間がない方も、COOPなどの大型店で売ってるのを買えます。固有種なんて生産量少なそうだから希少で高いかというとそうでもなくて、それはそれで大手メーカー系列からも出ています。例えばBibacchusはCOOPとCelliers de Sionの共同出資のブランドらしく、ここから出ているブドウ品種シリーズは充実の13種類(赤8、白5)。お値段も15フラン前後と手頃です。Celliers de SionはSionにあるワイン施設を運営していて、それについては後で。
ブドウ品種学習の面倒、かつ面白いのは同じ品種が地域や国により名を変えることです。前述のとおり、ジュネーブやVaud州でのChasselasはValaisではFendant、ドイツではGutedel。同じValais州でも西側フランス語圏でのPaïenは東側のドイツ語圏ではHeida、ほかの地域ではSauvagnin Blancとなります。Pinos grisはValaisではMalvoisie。JohannisbergはSylvanerと同じという説も、ちょっと違うという主張も。Johannisberg、最初に見たときは南アフリカ産?と思いましたがチーズフォンデュによく合う白です。
Valais州のワイン用のブドウ品種について(英語)
https://www.lesvinsduvalais.ch/en/cepages/
スイスのブドウはどこから来たのか?(固有種と思っていたのも実はフランスやイタリアなどから来たことが(昔の話だが)近年の遺伝子解析によってわかってきたという話:
https://wp.unil.ch/allezsavoir/dou-viennent-les-vins-suisses-que-nous-buvons/
スイスのブドウの品種(英語)
https://swisswine.ch/en/grapes