Val Müstairとその周辺 (1) Stelvio-Umbrail 14/18

2019年の遠出+α 第2弾(第1弾はHaslibergについて書きました)。Val (谷) Müstairは上の地図で黄色に塗った所、スイスの東端の端。

周辺国の辺境が集まったところがスイスならば、スイスの端には何があるだろう?と言ったらそりゃ国境ですわ。ランス、イツ、ーストリア、タリアに囲まれ「」の文字の左にある卵型の極小内陸国はリヒテンシュタイン。これらの国境は現在の話。第一次世界大戦時は、Müstairのすぐ南にオーストリアーハンガリー帝国とイタリア王国の国境がありました。そういえば、Müstairから対角線で北西方向の反対側の出っ張ったところはJuraで、第一次世界大戦中の独仏国境はCourgenayのすぐ隣でした(現在の国境は、より北東のBaselの隣に)。

東西に伸びるMüstairの谷にある村の一つSanta Maria Val Müstair(標高1375m)。ここから南にどんどん上っていくとUmbrail峠、Umbrail pass(ロマンシュ語)、またの名はGiogo di Santa Maria(イタリア語)でスイスとイタリアの国境になってます(紫の太線が国境)。夏期のみですがバス便もあります。

Umbrail峠から南東にはStilfserjoch/Giogo della Stelvio、Stelvio峠(2757m)。車で通れる峠としてはヨーロッパアルプスで2番目の高さ(一番高いのはフランスのIseran峠 2764m)。見よ、この美しきヘアピンカーブ。全部で84あり、イタリアの自転車レースGIROのコースにしばしば選ばれます。Stelvio峠は1825年、オーストリア帝国の命により、領内の現在の南チロルとロンバルディアを結ぶ、車が通れる軍事道路として造られました。ところが1861年にイタリアに新しい国ができ、オーストリアはロンバルディアを失い、Stelvio峠はオーストリア・ハンガリー帝国とイタリアの国境となります。

第一次世界大戦中はこの氷と雪の地で両国の兵数千人が戦いました。スイスは戦争には直接参加しませんでしたが、Juraでと同様、ここに兵を集めて守りを固めました。大戦後、Stelvio峠の東側の南チロルがイタリアに割譲され、峠の東西ともにイタリア領内となり、峠の軍事的重要性は失われていきました。峠の直上にはPiz da las Trais Linguas。ロマンシュ語で3か国語のピークの意味。ロマンシュ語、イタリア語、ドイツ語。スイス、イタリア、オーストリアの三カ国。それぞれVal Müstair、Valteline、Vinschgauの谷につながっています。

左がイタリア兵で右がオーストリア兵か?

Sta Maria Val Mustairに博物館Stelvio-Umbrail 14/18があります。Chasa Plazにあるユースホステルの一部で、ホステルと共に夏期のみの開館(今年はどうだか不明ですが、例年も夕方の17~18:30と開館時間が短いです)。

第一次世界大戦中の山岳地帯での暮らしと国防活動についての展示のようですが、私が去年行った5月はまだ閉まってました。上の写真はモニュメントの横にある3か国の国旗。

博物館の前にあるのが2007年に作られたこのオブジェ。3つの国の兵士、3体の岩はPiz da las Trais Linguasから運ばれてきた岩。イタリアの山岳兵は帽子に鷲の羽をつけていて、スイス兵はポンポンがついた帽子というので、おそらく左からオーストリア、イタリア、スイス兵でしょうか?足元には6つの頂を持つ星型。大戦中の地理的・政治的状況を表しているんだそうです。

5月の中旬はまだ肌寒く、天気も悪かったので2012年9月の写真も混ぜます。Sta Maria Val Mustairの郵便局、扉に郵便袋が掛けてあり、郵便バスが回収していくシステムですが、郵便局は現在は閉鎖されて隣の雑貨屋が兼務してます。Sta Mariaには町の西にスーパーVolgとパン屋あり。

さてここはBassa Engiadina(エンガーディン)地方。家々の外壁に描かれた模様がそれはそれは美しく、Santa Maria もそう。写真が沢山あるので少しずつ載せよう。

これはHotel Crusch Alba。泊まれます。

ここも「Zimmer」の看板があるので泊まれますね。朝食付きとあります。

写真と訪問は2012年9月と2019年5月。天気が良い写真が2012年のほう。

博物館のサイト。開館時間等の情報の他に、峠の歴史的意味や歴史的な背景を考えながら歩くコースの案内もあり読みごたえがあります。

https://www.stelvio-umbrail.ch/hauptseite.html

https://www.exponate14-18.ch/

地図の緑と赤の線がハイキング路。峠へは標高2000mを超えた部分を歩き続けるので装備は念入りに。すぐ横をバスが走ってはいますが一日1便だし。Sta Mariaから峠までは珍しい植物が観察できるコースとしても知られています。Val Mustair一帯は国立公園に含まれています。Stelvio峠を東に行った先に登山家メスナーの記念館の一つがあるらしい。なんでも6か所もあるうちの一つ。

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