L’Escalade(1)ジュネーブがSavoie軍を撃退したのを祝う

フランスのHaute Savoie、サヴォア地方とスイスのジュネーブをつなぐ鉄道網レマン・エクスプレスが営業を始めたのが2019年の12月15日の日曜日。その前の週末は、ジュネーブ市民がクリスマスより重要視しているとも言われるL’Escalade(レスカラード)がありました。L’Escalade(レスカラード)とは、1602年の12月11日から12日にかけての晩に、ジュネーブに攻めてきたSavoyard、サヴォワの軍勢をジュネーブ市民がやっつけたことを記念するイベントです。

当時の街は城壁で囲まれていました。午前2時に闇夜に乗じて城壁にはしごをかけて侵入してきたSavoie軍の兵士の上にBrave Dame=勇敢な二人のご婦人が熱いスープの入った鍋を投げ落とした(それだけでは勝てなかったけど)のにちなみ、12月が近づくとジュネーブではチョコレートで作ったMarmite=鍋が店先に並びます。

チョコレートでできた「鍋」。赤と黄色に鷲と鍵が描かれてるのはジュネーブの紋章。よく見ると梯子もついてますね

小さいのは家庭で食べますが、大きいのは翌月曜日に職場などで集まりチョコレートを割り、中に入っているマジパンでできた野菜(野菜スープにちなんで)や飴玉などを皆で食べて祝います。

当時のレシピでの野菜スープ一杯5フラン。左端に鍋が見える(2019)

つまり2019年にはサヴォイ軍を撃退したぞ、ジュネーブは独立を守ったぞ、と気鋭を挙げた翌週に今度は両国の連帯のための鉄道が開業したんですね。もっとも12月15日はスイス全土の鉄道の年に一度の時刻表改正の日なので狙ったわけではないです。しかし、偶然にもその前の12月12日、まさにEscaladeのその日に行政トップなどお偉方を招いての一番列車が走る式典がありました。

職場の同僚に勧められ、予備知識なしで初めて足を踏み入れた時の驚きは今でもよく憶えています。スイスの町は日本に比べると照明が少なくかなり暗いです。そのほの暗い灯りの中、ほとんど中世か!という感じの家々の細い通りを、1602年の格好をした人が忙しげに歩いていました。

TAVERNE1602 当日出ている出店はすべて1602年委員会のメンバーによるもので、売り上げは衣装の新調などの経費に充てられます

金曜の夜から日曜にかけて、1602年委員会のメンバーが、出店を出してホットワインを始めとする軽食を売っています。またこのさほど大きくない旧市街内を、かなり頻繁に音楽部隊や槍などを持った一団が行進してきます。音楽隊は遠くからでも聞こえるので、すぐわかります。追いつけます。なんとなく後ろについて歩いてみると楽しい。すごい細い小道とか入っていくから。大聖堂の前では火縄銃の実演などをやってます。市庁舎の中庭では接近戦のデモ、大砲のデモ、この3日間だけ通れる小路(ここを通るときは小銭を渡そう)、この日だけ開放している歴史の間、など色々あります。昼間も楽しいですが、日が落ちてからの雰囲気は最高だと私は思う。

Escalade(仏語)を辞書で引くと(1)よじ登ること、登攀(2)軍事用語で紛争の段階的拡大、エスカレーション (3)法律用語で家宅侵入(4)そして古語で要塞などへの、はしごを用いた攻撃、とあり、ジュネーブのEscaladeは最後の(4)のことでしょうかね。

1602.chのHPによると、1602年委員会のメンバー2200人、うち800人が当時の扮装で街中に出没しています。

写真は2011、2012、2019年12月のL’Escalade時。

Compagnie de 1602、1602委員会公式HP: https://www.1602.ch/wp/

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