<今日の話はスイス特殊事情であるらしく、少なくともフランスでは事情は異なります!>
不動産を購入する場合、一括払いでなければ銀行でローンを組むのは日本と同じです。しかし、借金が残ったまま定年である65歳を迎える(以降は年金暮らし)どころかお亡くなりになる、または老人ホームなどに入るなどで買った家を出る日までローンが完済してない、それも計画的に借金を残すのはスイスでは普通のことです。
もちろん借金には利子が付くわけで、少しでも余分に払わなくてもすむように、少しくらい無理をしてでも働いて収入があるうちに完済して、早く「100%自分のもの」になった家でくつろぎたいのに、と最初に聞いたときは驚きました。
なぜ借金を残すかというと、不動産が途方もなく高額なこととに加えて、借金があることで確定申告(スイスに住む人はサラリーマンであっても毎年自分で確定申告を行わなければならない)により税金が軽減されるからです。政府が国民に借金を奨励!銀行側は金を借り続けてもらって、金利を払ってもらえて儲かるからです。借金は残したままとは言っても毎月いくばくかは払い続けるので借金残高は減ります。賃貸でも家賃が非常に高額なので、それとの比較でもあります。
そしてこんな貸し手借り手の関係が継続できる最大の理由は、築数百年の建物が割と普通に現役であることから推察されるように、数十年くらいでは建物の価値が下がらないからです。築100年の建物だったら、完全バリアフリーじゃないかもしれないけれど内部はリフォームされているだろうし、あの頃の建物は重厚に作られてていいよなあ、などと想像します。銀行は建物(と土地)を担保にお金を貸し付けます。その不動産に価値がある限り、貸した金に利子が付く限り銀行にとって損はありません。
家の持ち主は、一軒家にしろ集合住宅の一部屋にせよ、次の買い手に家を売ることで借金の埋め合わせができます。日本では住宅ローンの借主が返済途中で亡くなった場合借金がチャラになりますが、これは「団体信用保険」に加入しているからだそうですね。スイスの場合、この制度は無いです。借金が払えなくなったら家を出る。これが掟です。破産した人の不動産で自治体預かりになったものは競売にかけられ、そうした通知が広報に時折出ます。子供が不動産を引き継ぐ場合は借金も含めて引き継ぎます。「スイスでは数世代にわたって不動産の借金を払い続ける」というのはこうした事情です。
借金が残ってもいいなら、分相応の高額の不動産を購入できるか?そんな甘い話はなく、価格の20%程度は自己資金で払わなければなりません。残りの金額も、果たして借主が返し続けることができるに十分な収入があるかどうかの審査は厳しいです。(10月7日追記:この20%というのは最低ラインですし、月々の返済額や返済期間は借りる人の年齢等に左右されます)
不動産の借金は、物件を次の人に売ることで回収される(売ったお金で老人ホームに入ることも多い)ーということは不動産の価値が下がらない、建物がほぼ間違いなく売れることが前提です。土地や建物の価値、適切に造られているか、担保分の価値があるかは銀行も一緒になってチェックしてくれてるから安心だよ、という話もあるけどどうだかなあ???銀行は不動産の価値に対してお金を貸し付けているので、暴落時には「担保が値下がりしたので貸した金の一部を返せ」と急に言われた例もあったそうな。情け容赦ない。
日本からスイスの空港に降り立つと、ジュネーブにしろチューリッヒにしろ、上空からの景色は緑が多くて「なんて田舎!」と思う方も多いでしょう。ハイジ、山、牛、牧場のイメージか?ところがどっこいスイスでも過疎が進んでいる地域もあるけれど、交通の便がいい都市部では慢性的な住宅不足でそれはそれは恐ろしい勢いで住宅建設が進んでます。そしてこの10年の住宅価格の高騰ぶりも恐ろしい。
なぜに年月が経っても建物がそれほど劣化しないのか?湿度が低い気候もあるけど何よりも造りが大変に頑丈で、それが住宅価格を押し上げる要因でもあります。写真でもありますが、建設現場には数階建てのであってもクレーン。このクレーンが相当大型。あと完成までに要する期間が長い。日本には一夜城の伝説があって~と言いたくもなるノロさ・・・
コメント
住宅事情、大変参考になりましたー
スイスの場合、狭くて限られたスペースに人口が集中しているという特殊事情なんですよね。お隣のフランスやドイツに行くと広々としたところで簡単に家を建てていて別世界の感があります。