青空議会とも訳されるGlarus州のLandsgemeinde（Glarus方言ではLandsgmei)、私が去年訪れたときは本当に青空だった、暑かった！今年のLandsgemeindeは5月5日（毎年5月の第一日曜日）、前日、当日とも最高でも5度位にしかならない低温、時折雪がちらつく雨模様でした。荒天が予想される場合には一回に限り次週に延期されるのですが、これしきの天候では延期の対象とならず、5月としては極寒の中の決行でした。今年の春は本当に寒い日が多い！
このスイス東部の小さな州で開催されるLandsgemeindeが私の住んでる西部フランス語圏で報道されることはあまりないです。最近では2017年にブルカ（イスラム教徒の女性の一部が身に着ける全身を覆う衣）を公共の場で禁止するかについて（否決）議論した際に注目されたくらいです。今年私が耳にしたのが開催後二日後の火曜日に、悪天候により参加者が少なかった（それでも5000人も来た、例年は6000人から9000人とか）、1／3以上が途中で帰ってしまい（それでも2／３くらいが3時間、最後まで残った）、有権者の20%しか参加していない状態で直接民主主義と言えるのか、についての報道でした。
Landsgemeindeは州予算や州判事の任命も行うのですが、もう一つ注目されたのがTanzverbotについてでした。Tanzは踊り、verbotenは禁止、Tanzverbotは中世より続く舞踊音楽禁止令です。スイスの祝日（少ないよ！）のほとんどはクリスマスやイースターなどのキリスト教関連です。これらの日は昔はどこでも家か教会で神妙に過ごす日だったわけですが、Glarus州ではいまだにダンス、音楽、スポーツイベントが禁止されてるんですね。日本からすると一年で最大級のどんちゃん騒ぎをする稼ぎ時のクリスマスに家でおとなしくしてろなんて、と驚愕するところですが。禁止されているのは「音量の大きい催しすべて」で、音楽・ダンス・スポーツが含まれますが、家庭でうるさくしなければOKだそうです。
知り合いのGlarus人曰く「年にたった数日くらい静かにしている日があってもいいじゃないか。古臭い決まりと言うなかれ、GlarusではLandsgemeindeによって最初にして唯一16歳から投票できる権利を与えた先進性のある州なんだから」と禁止令には肯定的でした。今回の禁止令撤廃はディスコなどの経営者が「せっかくの休日に客が近隣州に流れてしまって金を稼ぐ機会を失う」と提案しました。結果としては全面解除ではなく「屋内でならOKだが、屋外や公共の場所では不可」という緩和案が採択されました。つまり今回の改正によりディスコは祝日が始まる午前0時になっても店を閉めなくても良くなりました。こうした折衷案も採られるのが、話し合いによるLandsgemeindeの利点だと思います。
Landsgemeindeから一週間後に日曜紙Matin Dimancheにあった記事によると、TanzverbotはGlarus州に限りません。Obwald、Appenzell-Innerrhodenの両州では年に数回あるキリスト教の祝日には宗教関連以外の歌や踊りのイベントを企画することからして禁止されています。Schwytz、St.Gallen、そして今後Glarusでは屋内に限ってOK。Aargau州では2016年の州投票でTanzverbotの撤廃を否決（Tanzverbotがどの程度の厳格さであるかは不明）。挙げた州はすべてドイツ語圏の州ですが、フランス語圏ではNeuchâtel州で去年から、クリスマスと聖金曜日の公共の場所での歌と踊りを許可されたそうです。
Landsgemeindeの公式サイト。案件を理解するためのハンドブックもダウンロードできますが、何より、今年の雪が降ってる中の写真が掲載されてます。
https://www.landsgemeinde.gl.ch/
アーカイブには1956年から今年の分までの全音声記録があります（5月15日の時点では今年の分はまだ無い）
https://www.landsgemeinde.gl.ch/archiv
RTSラジオでのニュース：5月７日 異例の寒さにより、スキーのいでたちで参加した人もいた、とある（2分）
RTSラジオでのニュース：5月3日 Tanzverbot廃止案について（2分）